第二話 王都へ 中編

 次の日妙に暑くて目を覚ますと、サラ姉がシルフィに抱き付き、シルフィが俺に抱き付いて眠って寝ていた。

 「なる程……暑いわけだ」

 シルフィとサラ姉を起こさないように気を付けながらベッドを降り、カーテンと窓を開け日光と新鮮な空気を部屋に迎え入れた。

 「そう言えば……サラ姉とか来てるし何か狩りに行って来ようk――痛ってぇ!?」

 扉の方に向かおうとしたら、突然足の指に鋭い痛みが走り下を見て確認すると、サラ姉が身に着けていた防具や服が散乱していた。

 まさかと思いながらサラ姉を見ると上は肌着を着ていたが、下は下着だけというあられもない姿だった。

 「はぁ……」

 この家に泊まるときは大体こんな格好だから見慣れてしまった俺が居た。

 「……狩りに行くか」

 弓と矢が十数本入っている矢筒と短剣を持って部屋を出た。


 「………」

 リビングに入ると騎士団の人達とレオ兄が雑魚寝といううか折り重なるように眠っていた。

 取り敢えず人を踏まないように一足で玄関の扉の前まで跳び、そのまま家を出て狩りに向かった。

 俺も狩りには大分慣れているので苦労せずに雌の角鹿ロークアリーニを仕留め、手早く血抜きと内臓を処理して土に埋め、角鹿を異空間に仕舞い家に戻った。

 キッチンに繋がっている裏口から入ると、白亜ハクア黒亜クロアが何か悩んでいるようだった。

 「おはよう二人共、どうかしたのか?」

 「あ、ご主人おっはよー」

 「おはよう御座いますご主人様。実はパン等はお客様の分もあるんですが……」

 「おかずがね、全くないの」

 「なら丁度良かった、ホラコレがありゃ足りるだろ?」

 そう言って異空間から角鹿を取り出し無駄に大きく作られた調理台の上に置いた。

 「さっすがご主人!!」

 「見事な角鹿ですね、流石です。黒亜、やりますよ」

 「了解!!ご主人はゆっくりしててね!!」

 「わかった。それじゃよろしくな」

 「はい(うん!!)」

 二人の返事を聞いてから手を洗ってからキッチンを出てリビングに入った。

 リビングでは騎士団の人達はもう起きていて、レオ兄が指示を出してリビングの掃除をしていた。

 「おはよレオ兄」

 「お?おお、おはようエル早いな」

 「いつも通り起きただけだよ。サラ姉は……まだみたいだな」

 「アレでも一応近衛魔法士の団長なんだぜ?」

 「……レオ兄は?」

 「へへへ、近衛騎士団長だぜ!」

 「フフフッ……リビングで雑魚寝する騎士団長ねぇ?」

 声がした方を見ると母さんがニヤニヤしてレオ兄を見ていた。

 「ハハハハハ……ナ、ナンノコトデショウカネ~?」

 レオ兄は引き攣った笑顔を浮かべていた。

 母さんがレオ兄を弄ってそれを見て笑ってたら階段を降りてくる音が聞こえ、未だ眠っているシルフィを抱えてちゃんと服を着て、防具を着けたサラ姉が降りてきた。

 「おはよ、お師様、エル君。レオと騎士団の皆も」

 「おはよサラ姉」「おはようサラ」「おっはー」

 サラ姉と挨拶を交わしてそのままシルフィを渡されたから、抱っこしたまま椅子に座った。

 「……ん」(犬耳ピコピコッ)

 「お?」

 シルフィの耳がピコピコ揺れ、目を覚ましたと思ったら、キッチンか白亜と黒亜が朝食を持ってきた。

「料理が出来ましたよ。騎士の皆様もどうぞお食べ下さい」

 遠慮している騎士の人にも黒亜が強引に料理を渡していた。

 「さて、食べようかね」

 母さんの言葉に皆頷いて料理を食べ始めた。



 食事が終わると直ぐに騎士の人達は出発の用意をして、母さん俺とシルフィの荷物を積み込んでくれた。

 レオ兄は外で騎士の人達に指示をしながら馬の用意をしてくれている。

 「エル君、忘れ物無い?」

 両腰に付けている白亜と黒亜を撫でて頷いて無いと答えた。

 「シルフィちゃんとお師様は?」

 「問題ないさね」

 「ん!!」(コクッ)

 「よしっ!それじゃいk――」

 『ちょっと待てウルカ!?止め…ぬああああああ!?!?!?』

 「「「…………」」」

 窓の外を見るとレオ兄がウルカにジャレ付かれていた。

 「フム……問題無さそうだね」

 「……遊んでる……良いな」

 「シルフィちゃん……」

 三者三様の反応を見せていたのを俺は溜息付いて見ていた。



 家を皆で出て頭というか顔全体をウルカに咥えられてるレオ兄を回収して代わりに馬具を付けた。

 「さ、さて…色々あったが出発するか」

 「フフフッ、色々あったねぇ?騎士団の諸君、よろしく頼んだよ?」

 「「「「「ハッ!」」」」」

 「お師様とシルフィちゃんは馬車に乗ってね。エル君はウルカちゃんに乗ってね」

 サラ姉の言葉に頷いてウルカに跨がると、母さんは家をまるごと覆う強力な結界を張って、シルフィを先に馬車に乗せてから乗り込んだ。

 

 「あれ?この隊の隊長俺だよな……?」

 「ドンマイ、レオ」

 「ドンマイ、レオ兄」

 馬車に乗り込んでいく母さんの姿を見つめているレオ兄の肩をサラ姉とほぼ同時に叩いた。

 「慰めんなお前等!……はぁ、それじゃ、出発!!」

 「「「「「応!!」」」」」

 レオ兄の掛け声で騎士団の人達が馬に乗り込みゆっくりと出発した。

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