タイトルよりもずっと硬派で人間味のあるバランス型ファンタジー

 昨今流行りのファンタジーは良くも悪くも「ご都合主義」か「理不尽」のどちらかに偏らせすぎるきらいがある。
 この物語は、まあまあどん底からスタートするも、簡単にはチート成長もしないし、俗に言うざまあな展開もなかなか起こらない。
 かと言って、人がバンバン死んだり理不尽に世界が壊れる話でもない。
 そう、ファンタジーはあるけれどかなり現実的な「悩み」や「葛藤」を表現している物語で、リアリティがあるバランスの取れた物語だ。
 それでいて、平坦な物語にはならず中だるみも少ない。
 最近は少なくなった古来のファンタジーの派生型で王道と評する人が多いのは納得であるが、若い読者が思い描く王道とは少し違うかもしれない。
 チートや爽快感重視の物語を求める人には向かないかもしれないが、それでも一度は読んでもらいたい。
 悩みや葛藤の中から生まれるファンタジーと言うジャンルがここにあり、その魅力に取り込まれる人もきっといるはずだから。

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