第10話始まる退屈な日々
ぼくは、タクシーに乗っている。
ぼくは入部届を提出した後、何処かに向かっていた。旧校舎に部室があるのだろうか。学校からは真反対に離れていっている。この学校は旧校舎があり、そこで部活動をやっていると考えれば自然ではあるので、ぼくからは何も言わない。
ゆらゆらとタクシーに揺られながら、ぼくは窓の外を見つめる。
目がつくのは、ヒト。別の視線を向いても、ヒト。全く興味がわかない。
ぼくは、ようやく退屈な日々から脱却できる。目的が、果たせる。
「どんなところだろうね」
ぼくの隣にいる彼女が言う。
彼女は僕とともにタクシーに乗っている。彼女自らが案内してくれるという。
彼女が笑顔で微笑んでいるが、ぼくは何も答えない。
答える気もしない。というよりは、ぼくの眼中に彼女はいない。そこにいるだけの存在。認知はできるけれど、興味がない。
興味がないことだらけだ。
「そうだな」
「嬉しくなさそうだね。ひょっとして、不安?」
「不安ではないけど。なんか、答えるのがめんどくさい」
「そう……。ごめんね。気を遣わせたよね」
「あのさ」
ぼくは。
ぼくは、疑問だった。
ぼくは、寛大だった……?
ぼくは、理性だった……?
それは、事実か……?
わからない。大事なものが少しずつ失われていっているような感覚。覚えたはずの単語が出てこないあの感じ。
口でパクパクとしてみるが、言葉が出てくる気配がない。
「ん? どうしたの?」
彼女は心配そうに顔を覗き込む。
ぼくは、頭を抱えている。
なんで。
なんの為に。
なんの目的で。
なんの因果で。
わからない。大事なものが少しずつ失われていっているような感覚。覚えたはずの単語が出てこないあの感じ。
口でパクパクとしてみるが、言葉が出てくる気配がない。
「どうしたの? 具合が悪くなった?」
彼女はぼくの背中をさする。
ぼくは、申し訳ないと心から思う。
彼女に対して?
僕に対して?
タクシーの運転手に対して?
わからない。大事なものが少しずつ失われていっているような感覚。覚えたはずの単語が出てこないあの感じ。
口でパクパクとしてみるが、言葉が出てくる気配がない。
彼女。
彼女って誰だ。
「なあ、あんたは一体誰なんだ?」
「えっ……」
日岡さん? 橋本さん? 聞き覚えた名前が出てくるが、わからない。誰なんだ、そいつらは。
だとしたら、彼女は誰なんだ?
そして、ぼくは考える。
それよりも。ぼくは、一番に疑問に思っていたことがあった。
それは。
その内容をぼくは、
口に出して、
みることにした。
「ぼくは、だれだ?」
監禁された少女、退屈な日々 宇津田 志納 @utudashinou
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