クローンのバラには心がない
クローンのバラには心がない(1)
滑らかな曲面、よく研磨された大理石のようなDDDの搭乗席。そこに機械の計器らしい突起はなく、座席も含め全面が外の銀河を全球に移すモニターとなっている。一たび銀河を移せばどんな硝子よりも透き通って感じられ、体が触れていれば其処にあるのがわかる程度だ。
scale 1.000000 1.000000 1.000000
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visible 0 locking 1 vertex 1314 {
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そのDDDの搭乗席。細切れになった
「管制へ。戦闘を終了、帰投します」
『こちら実証艦アンティキティラ、了解した』
母艦へ帰るための作業は必要ない、自動操縦に任せて眠りへ落ちるだけだ。体を洗うのはアンティキティラの
部屋、潰れた球体の内側のように丸く継ぎ目なく白い部屋。
赤血球のような形の白い腰かけ。
調整室と呼ばれる部屋。
膝を抱えて座っているのは私……私は……。
うん、いい名前――主治医のダムキナだよ。今日からよろしく――。
「バラ」
まず、その日はバラという名前があった。目覚めたのも戦闘機の中ではなかった。そして薄いとは言え服を着ていた、白い服を。
「やぁ、さっき会ったね。やぁやぁ」
違いがもうひとつ、バラへ手を振っている
「何時もと違うでしょ? 戸惑うかもしれないけど……キミとどうしても話がしてみたくってさ。無理言っちゃったかな?」
「いえ、おはようございます。ダムキナ博士」
「う? どうして名前知ってるの?」
「博士はフドウ所長と話していました。その内容です」
「眠ってるとばかり……そうそう、話したかったのはキミの名前を用意――」
「私はバラです」
「あははは……そっか聞いてたんだ。こりゃ油断できない」
ダムキナは幾つかの事をバラに話した。
うーん、やっぱりカラダ細いね。歩きにくいでしょー? これからは筋肉増強剤を使うし、きっと歩きやすくなるよ――。これからキミの担当はワタシなんだ。でもねぇー、まだ来たばっかりで何っにも準備できてないのさ。もう少し今の生活が続くけど我慢してね――。キミの部屋も用意するし、もっといい服着ないとねっ――。起きてるのが長いと髭が生えるんだ。髭は剃り方教えないとね。あっ、分からないからフドウに聞いとかないと――。
ダムキナの声は水中から聴いている様にぼやけ、時間間隔は非連続。会話が遠い暗がりへ靄が浮かぶように記憶されてゆく。それでも最後に話した事だけはハッキリしていた。
「その――私ってのは直さない? ダメ?」
「それは何故でしょうか?」
「まず……モテない、好みじゃない、脇役みたい、
「ではどのように?」
「俺……とかどう? 言ってみて」
「俺」
「そのですますの口調も直そう、出来る?」
「わかった」
「うっは、シビれるね」
このあとバラはいつの間にか眠りに落ち、気が付けばまたDDDの中に居る。まるでダムキナと会話している最中に場面が切り替わったように感じられた。バラがダムキナに再び会うのはもう少し先になるようだ。
応答しろ、
「異常なし。小惑星帯で待機中」
次の実験が始まっていた。
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戦闘用クローンのバラには心がない (2)へ――
DDD ももじじゅ @MOMOJIJU
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