第19話人を殺した
認知症が酷く進み、買い物は行けない祖母の仕事は洗濯になった。
背の低い祖母は洗濯を干すときに高い踏み台を使う。その日も踏み台を使って洗濯していた。
私の部屋はベランダに面しており、ベランダの音がよく聞こえた。踏み台をズズーっと移動するときにする音もよく聞こえた。
その日私は疲れていた。ほぼ一日中世話をしたり見張っていたりしなければならない祖母。洗濯の時は私の休み時間。布団に転がっていた。次の瞬間「ガタンっ」と大きな物音のあと「ドスン」という音がした。祖母が踏み台を倒した音だとすぐ分かった。そしてそこから祖母が落ちたのだというのも想像できた。見に行かなきゃ、早く見に行かなきゃと思うのに身体が全く言うことをきかない。早く早くと思ってもやはり動けない。そのうち、いや、少し踏み外して転んだだけだから大丈夫だと言い聞かせるようになっていった。大丈夫、大丈夫…、、、。気が付いたら夕方まで眠ってしまっていた。リビングに行くと祖母の姿が見えない。まさか!と思いベランダへ出ると祖母が倒れていた。息はしていた。意識もあった。どこかが痛くて動けないのか、頭を打ったのか聞いても分からず、手を貸すと起きて普通に動くことが出来た。父にベランダで倒れていたことを言った。午前中から夕方まで気付かなかったと嘘を付いた。父は病院へ連れて行くことはしなかった。恐らく医療費がなかったのだろう。
祖母はその日から食欲がなくなり、見る見るうちに衰弱していった。そして数日後肺炎による誤嚥で亡くなった。
私が殺したんだ。あの時直ぐに見に行けば肺炎なんて起こさなかった。長時間外で倒れてたから…なんてことをしてしまった。
まだ死なない ゆゆゆゆゆ @kyuko
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