空虚の国のアリス
狐白(こはく)
ProloguE
花咲く園で一人の少女の命がかくも儚く消えていった。まだ幼かった少女には自らが死んで居ることもわからないかのようで、少女をとり囲む者は皆口々に「ああ、可哀想に」「ああ、可哀想に」と泣いている。
「Good bye my sweet girl」
少女は最後まで愛されていた。少女は最後まで微笑んでいた。少女は最後まで生きていた。少女は
「もう、もう沢山だっ!!!!!」
がちゃん
大きな音を立て、テーブルの上に置いてあったティーポットが落ちる。入っていた紅茶が割れたティーポットから流れる。声の主はぐしゃぐしゃと頭を掻き毟り、感情のまま叫ぶ。
「なんでっ!!!!!なんで君が死ななきゃいけなかったっ!!!!!死ぬなら僕でも良いじゃないか!君の代わりなんていないんだよ!!!!君以外ではダメなんだよっ!!!!!もう君の声が聞けないなんて嫌だ!!!もう君と話せないなんて嫌だ!!!大好きな君ともう二度と会えないなんてっ…………そんなの、そん、なの………………なんでっ……なんで……………………」
徐々に小さくなってゆく声。もうそれを慰めてくれるはずの少女の声は聞こえない。少女は、死んだのだ。もう少女には会えない。
「愛していたのに、あんなにっ…あいし、あったのに…………僕は、きみがいた、から…ぼくを、すきに、なれたの、にぃ…………なんで、きみが………………」
うわごとのように呟く。だが、その声は人の声に溶けて消えていった。誰も声に耳を傾けない。何も聞こえていない。誰も聞いていない。声の主はその様子に一度呟くのをやめた。そして、ゆっくりと口元を持ち上げた。
「ああ、ああ、そうだ。こんな世界終わって仕舞えばいい。こんな世界、彼女がいない世界なんて、いらないっ!!!!!!!」
パキィン……
ガラスが割れるような音の後、みるみるうちに世界は灰色に染まって行った。もう誰もいない、誰も何もいわない.。聞こえるのは、誰かの泣き声だけだった。
「次こそ、次こそは、一緒にいよう、アリス」
空虚の国のアリス 狐白(こはく) @kohaku_siraha
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。空虚の国のアリスの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます