選択肢とは、ツキが支えるものですよ?

「おやおや、一体どうしたのですか?そんなにお怒りになって」



一問目も二問目も、適当な未来を捏造しやがって。何が選択肢の答えだ!



「ツキカゲさん。


あなたは選択肢というものをそもそも判っていらっしゃらない様ですね。


選択肢の答えが、すぐさま判るなんて、一体誰が決めたのですか?」



それは、そうだが。


だとしても、こんな都合の良い様な未来誰が信じろっていうんだよ!



「信じられないかもしれませんが、これが選択肢の正しい答えです。


第一問目でツキカゲさんに見えている正解は、スパゲティが好きになった。


確かに、その場ではそれが選択肢の答えに見えるかもしれません。


第二問目では、告白して女子にフラれた。


その場ではそれが選択肢の答えに見えるかもしれません。


しかし、答えは、ずーっと先にあるんですよ。それが、選択肢というものです」



・・・・。



「ただし、一つだけ注釈をつけさせていただきます。


これは、ツキカゲさんが、その選択肢をしっかり選択した場合の答えです」



どういう意味だ?



「ツキカゲさん。あなたは今までの選択肢を、ただなんとなく、選択してきました。


それでは、絶対にこの様な本当の答えに辿り着く事なんて出来ません」



本当の答え・・・。



「折角ですので、もう1つ注釈をつけさせていただきます。


選択肢の本当の答えは、どの選択にもある。という事です」



なんだと?そんなバカな話が。



「いいえ。これは紛れもない事実です。私はクイズセンタクシの司会者。


勿論、全ての答えを知っております。そして、その答えは、ツキカゲさん。


あなたが選んだ選択肢にもちゃんとある事も」



俺が選んだ選択肢にも、本当の答えがあるなんて。教えてくれ。


俺が選んだ選択肢が、間違っていなかった事を。



「ツキカゲさん。もう1つ、あなたにお伝えしましょう。


間違った選択肢などありません。先程申しました様に、


どの選択肢にも、全て本当の答えが備わっています。


ただ、選択の仕方が違うのです」



選択の仕方?



「では、ちょっとしたクイズを!


選択肢という漢字、ツキカゲさんは書けますでしょうか」



手元にフリップとマジックが現れた。俺はそれに漢字で選択肢と書いた。



「正解です。その漢字。なんとも素敵だと思いませんか?」



まじまじと自分で書いた選択肢の漢字を見つめる。


これのどこが素敵だというのだろうか。



「良く見てください。選択をツキが支えるのですよ。


ツキ。つまり運です。


こんなに素敵な組み合わせ中々ないと思いませんか?


それに、私はこの言葉こそ、物事の真理だと思っております」



何が言いたいんだ?あんたは。



「この世の全てが、選択肢で溢れています。


今日何を食べるか、何時に起きて寝るか、誰と会うか、その全てが選択肢です。


それなのに、殆どの人間が、その選択肢の本当の答えに辿り着くどころか、


本当の答えがある事にすら気付きもしません。


皆、その選択肢が正しかったかどうかを気にするばかり。


気にしたところで、そこに本当の答えなどない事は判り切っているのに、です」



そう言われて、俺はハッとした。


今までの俺は、選択肢が正しいかったかばかり気にしていた。


そして、後悔ばかりを募らせていた。


その先には、何もない事も薄々判っていながらだ。



「お気づきになられましたか?選択肢の選択をツキが支えてくれるかどうかは、


その選択ではなく、選択したモノ自身で決まる事を。


ツキカゲさんだけではありません。皆選択を後悔して、ツキから見放されている。


それでは、本当の答えになど辿り着くはずもありません」



その通りだった。俺は、今まで、どれだけの選択肢を無駄にしてきたのだろうか。



「ツキカゲさん。これからは選択肢を無駄にしないでくださいね。私との約束です。


さて、これ以上湿っぽいのは番組らしくありません。


当番組はあくまでクイズ番組の体なのですから!


今回のクイズはここまでです!それでは!」



ハッと目が覚めた時、電車は丁度最寄り駅についた所だった。


慌ててカバンを抱えて電車から飛び降りる。


あれは、夢、だったんだよな。にしても、変な夢だ。


ただ、良い夢だったな。よし、頑張ろう。本当の答えに辿り着けるように。



「次回のクイズセンタクシの回答者は!あなたかもしれませんね!」

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クイズセンタクシ T_K @T_K

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