引きこもりの異世界快適化計画
@gomamaru
第0章 流星落とし
その平野には様々な種族の代表と1体の竜がいた。
その世界の人がみれば、「今から大戦でも始まるのか?」と恐怖に身を振るわせる程に有り得ない光景だった。
なぜなら本来はお互いの領地や財産を巡り争っているはずだからだ。
そう、〈本来〉なら――
「さて、どうしたものかねぇ?」
人間において最強と唱われた魔法使いは空に迫る直径5キロはゆうに超えそうな隕石を見て言った。
「やっぱ、無理じゃねえか?いくら俺らでもあんなでっけえもん壊すのはきつくねえか?」
ドワーフの長はそんな泣き言を言いつつも
部下とともにドワーフ特性の巨大な大砲のような物を入念に整備し続けている。
「なんだ?怖くなってきたのか?今なら国に帰ってもいいぞ?」
とニヤニヤしながら煽るのは吸血鬼の王。
「あんたもいい加減準備をしたらどう?」
そう巨大な魔法陣を書きながらエルフの女族長は文句を言った。
『こんな時でも相変わらず人というのは争うのか…』
と竜が顔をしかめながら空から降りてきた。
「どうだった?」
妖精が呑気に寝っ転がりながら竜に問いかける。
その問いかけに答えたのは同じく竜化して隕石の様子を見てきた竜人だった。
「場所はここに落ちるのは間違い無さそうだ。だが…あれを破壊するのは無理だな。表面に未知の鉱物をまとっているせいでブレスがあまり効かない。」
「ええ~!地上最強の種族と種族と生物だろ~?それぐらい何とかできるでしょ~?」
そう魔族の姉はぶうたれた。
そんな姉を妹は「竜人さんたちに失礼でしょ!」と慌てて宥めている。
その様子に竜人は苦笑しつつ、
「完全な破壊は無理だが周りをある程度削るくらいなら俺らでできそうだ。」
と言った。
そこで人間の魔法使いが手をパンパンと鳴らして注目を集めた。
「今日は皆が世界の危機のために集まってくれたことに感謝いたす。いつもはお互いに殺し合う関係じゃが、この際水に流しあの隕石を破壊する事に尽力を尽くそうではないか。」
人間の魔法使いはそう言いローブの内側から地図を取り出した。
「わしとしては隕石を丸ごと破壊するつもりじゃったがどうやら無理そうなんでの、隕石をある程度削ったところで結界を張って爆発を最小限に留めようと思う。」
「元からそういう作戦だっただろ。」
ドワーフの長が答える。
人間の魔法使いはさも今気づいたかのような顔をし、続きを話し始めた。
ジョークのつもりだったようだ。
「役割じゃが、竜と竜人殿にはブレスで隕石の削りを担当してもらう。そしてドワーフの『超巨大対隕石砲』じゃったかな?を使って隕石を砕く。そして中心に残る隕石をわしと吸血鬼が重力魔法で圧縮。そこを残りに結界魔法で爆発を押さえ込んでもらうと言う感じじゃ。異議はないかの?」
人間の魔法使いは周りを見渡すが異議を言うものはいなかった。
「では、隕石はまもなくじゃ。配置についてもらおうかの。」
そしてその時は来た。
隕石は近ずくにつれ平野をその陰で暗くし、すでに遠くの方では分離したかけらが降り注ぎだしていた。
普通なら神に祈りを捧げるか絶望に打ちひしがれるような状況だが、彼らはあいにく〈普通〉じゃあなかった。
そして彼らによる一世一代の大博打が始まった。
まず竜たちが飛び出し、その強力なブレスを側面にぶっ放していく。
しかし二手に別れているのでなかなか隕石は砕けない。
と、そこえチャージが完了し照準を定め終えた『超巨大対隕石砲』がこちらを向く。
役目を終えた竜たちが巻き添えを食らわぬように退避を開始する。
そして退避が完了すると同時にその巨大な砲が火を噴いた。
ドワーフが炎焦石と言う鉱石に含まれる火属性の魔力を大量に集めて放ったそれは竜のブレスを越えていた。
これをみた人はこういうだろう「まるで光の線が通ったように見えた」と。
しかし完全に消滅させるには至らず、ブレスによってはいった傷で周りが大小様々に分離しただけだった。
しかし想定済みの魔法使いと吸血鬼は降り注ぐ破片など気にせず中心に残った最も大きい部分を重力魔法で圧縮する事に集中する。
そしてついに地面に到達した隕石をエルフたちが結界で押さえ込みにかかる。
それは完璧な作戦に思えた。
しかし、彼らは計算ミスをしていた。
1つめは、隕石の熱による変質で思ったより破壊がうまくいかなかったこと。
2つめは爆発が結界だけではとても押さえきれる規模ではなかったことだ。
2つめは重力魔法も使って圧縮する事で対応した。
おそらく彼らにとって隕石を押さえ込んでいる間はとても長く感じただろう。
だが、爆発の中心ではある異変が生じていた。
そして――――
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