第2話 ヲタクの学校生活~朝礼前~
「おはよ、ひとみ」
「おはよ、ありさ」
「今日もまじで学校だるいわ」
「それな?でも、数学ないだけましでしょ」
「確かに。てかさ、教室行く前に職員室付き合ってくれん?テスト直し出してないんだよね」
「あ、うちもだわ」
今私の隣を歩いている子は岡野ありさ。高校に入ってからできた友達で、正直この学校指折りの美人だ。絶対中学のとき1軍だったであろうオーラもある。なんで大して特別な存在感もない私とつるんでるのかたまに不思議に思う。まあ、普通にいい子だ。...口の悪さを除けば。
「失礼します。2ー3岡野です。テスト直しノートを提出しにきました。花笠先生よろしくお願いします。」
「同じく、鈴木ひとみです。」
「なんでフルネーム笑」
そう言って、笑いながら私たちを手招きしているのは担任兼数学担当の花笠先生だ。数学の先生にしては珍しい?女性の先生だ。
「これ、遅くなりました。」
「次からは気をつけてね。」
「はい。失礼します。」
私は一言も喋らずありさと一緒にノートを出した。その時だった。私の目は先生のデスクにあるポーチに私の推しである男性アイドルグループ「KKK」のリーダー高見玲弥がプロデュースしたキーホルダーが付いているのを見逃さなかった。しかもそれは大人気アイドルグループである「KKK」のリーダーがプロデュースするのだから当然、形態も4つぐらいあって、全国書店販売をし、同時購入者には特典がつくものと私が踏んでいたにもかかわらず形態は一種類、全国書店販売はおろか店舗販売もされずネット限定という明らかに期待外れなものだった。これにより担当グループが事務所に干された疑惑が浮上し私のTwitterのタイムラインは荒れ、売上を意識したヲタクがこぞって商品を買い占め、蓋を開けてみれば入手困難を極めた伝説のキーホルダーとして「KKK」の歴史に名を刻んだという代物なのだ。それを先生が持っているなんて。私の胸は高鳴った。今すぐにでも先生に聞きたい。「KKK好きなんですか?押しは誰ですか?」と。しかし私にはそれができない。何故かって?決まっているではないか。私はドルオタであることを隠して生きているからだ。数人にはドルオタであることは知られているが、大半は知らない。ヲタであることを恥だと思ったことなど一度もないがやはり何故かどこかで隠してしまう。いや、隠すのではなく言わないのだ。言わないだけなら罪悪感も感じない。嘘はついていないから。一瞬のうちに不可能だと判断した私は表情をぴくりとも動かさず職員室をあとにした。言いたくて言いたてしょうがない気持ちを抑えながらありさと教室へ向かった。その間のありさとの会話は覚えてない。きっと塩対応だったんだろうなと思い心の中でありさに謝った。ヲタクとは推しが絡んでくると不器用になる生き物だと痛烈に思った。
ヲタクで何が悪い @NN7
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。ヲタクで何が悪いの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます