町に行く
第1話 筋肉痛は結構痛い
「もうすぐちゃんとした道が見えるから、頑張って」
ルビオの声援にこくこく頷いてなんとか返事をする。足は筋肉痛だし、ここ数日ずっと森を歩いていたし、慣れない野宿で寝ても疲れがとれないし、動物に襲われたりしていたせいで、もう喋る気力もない。それに、一応身体は拭いていたけど水浴びとかしていないから気持ち悪い。できることならお風呂に入りたい。
動物に関してはルビーとルビオが撃退してくれた。ありがたや…。
(もう二度とこの森来たくない)
少なくとも徒歩でこの森を歩くのはもう嫌だ。
「ほら、道がみえてきたよ。丁度馬車が通ってる」
「……いいなあ、馬車」
木も背の高い雑草もなく、土のデコボコも多少ならされている道を、馬車が通り過ぎていく。思わず漏れた願望に、ルビオは苦笑していた。
「なんで今までは道なかったんだ……」
「しょうがないよ。こんな森の中に住んでる人は、僕ら以外いなかったから」
道というか一応獣道はあったのでそれを通るようにはしていたみたいだが、危険な動物の足跡があったらそこは避けて通っていた。どちらにせよ疲れる。というか人間の作った道でも、筋肉痛のせいで歩くのが辛いことに変わりない。
「あとどのくらいでつくの」
「もうちょっとだけど、一旦休む?」
今の俺は多分ルビーのように生気がないんじゃなくて、生気を吸い取るレベルで疲れた空気を発しているんだと思う。ルビオに心配されてしまった。
「今止まったらもう一生動けない」
「じゃあ休むのはやめとこうか。でも、村で一泊するからついたら休めるよ」
なんだろうこの頼りがいのある感じ。すっごく頼もしいけど、子供に世話させてしまって申し訳ないような気がする。とりあえず頷いて歩く。
歩いていると、遠くに家々が見え始めた。三角屋根の背の低い家がぽつぽつと建っていて、青々とした広い畑のあるのどかな村。しかしその風景に感動するような余裕は俺にはなかった。
「あそこは宿屋だから、部屋をとろうか」
「やっとまともに休める……」
他の家と見た目はそう変わらないので、宿屋にはあまり見えない。宿屋はほんの50m程先だろうか。今になってはその50mでさえ遠いよ……。
宿屋につくと、ルビオは宿屋の近くの馬小屋に馬を入れた。一泊すればサービスで馬も泊めてくれるらしい。宿屋に入ると白髪まじりのおばさんが退屈そうな顔をして編み物をしていた。
「こんにちは、おばさん。一泊していきます」
「……」
おばさんは俺達をちらりと一瞥し、ルビオがお金を払えば特に何も言わず鍵を渡してきた。そして俺を怪訝そうに見たかと思えば、すぐに編み物を再開した。にこりとも笑わなければ一言も発さないなんて、接客業は向いていないんじゃないだろうか。
部屋は広くはなかったが、休むには十分そうだ。敷布団とか毛布とかは2つしかないが、ルビーとルビオはまだ子供で小さいから敷布団を2つ並べればそこまで狭くないだろう。
異世界に来たので帰るために頑張る 南国ゆうれい @nangokukuma
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