銀髪蒼目メガネ幼女と添い遂げたい!
かんむり
銀髪蒼目メガネ幼女と添い遂げたい!
「あの」
「はい」
「はいじゃなくて、あなた今自分が何してるのかわかってます?」
人間誰しも、己の欲求と言うものには逆らえない。
いやまあ、逆らうこと自体は可能なのだが、もはや俺には関係のないことだ。
――というわけで俺は今、突然目の前に現れた銀髪美少女を押し倒している。
「わかってます!」
「死にたいようですね?」
「もう死んでます!」
「魂ごと消滅させられますよ?」
「ごめんなさい!!」
うぬう、死んでしまえばこっちのものと思っていた時期が俺にもありました。
だって生前は一生童貞だったし……あ、ちなみに天寿は全うしましたよ?
89まで生きました。一人で。
別に寂しいと思ったことはなかったけれど、嫁が画面の中から出てきてくれないもんでやることもやれず、最期は弟家族に蔑まれた目を向けられながら……て何を言わすんじゃい。
しかしそんな人生だったもんで、死んで目が覚めたら目の前に美少女。これはもう襲うしかないでしょう。
なんか体も調子いいし? 死んでるけど。
十代二十代の頃の若さを取り戻した気分だ。
「やっぱりこの人消した方がいいんじゃないでしょうか」
「ぬ!? さてはお主、心を読んだな?」
「まあ、一応神様なのでそのくらいは」
「結婚してください」
「会話もできないんですか」
どさくさに紛れたプロポーズもだめか。
ぬう、どうにかしてこの銀髪蒼目メガネ幼女を堕とせぬものか。
下手に力任せにしたら今度こそ消されてしまいそうだし……うぬう。
「……どれだけ欲求不満なんですかロリコンジジイ」
「そりゃもう90年分がたまってますし!」
「胸を張るな死ね」
「もう死んでますって―」
ああ、その目最高です。
堕とす前に俺が堕とされるかもしれない。
いや、断言しよう! もう堕ちていると!!
「堕ちているじゃねえよもうメンドいからさっさと生まれ変わってください」
「あれ? なんか扱い雑になってます?」
「うっさい黙れ喋るなゴミカス」
「ありがとうございます!!!!!!」
「ひっ」
あ、なんか魔法っぽいのが。
生まれ変わってくださいとか言ってたし、輪廻転生の神さまなんですかね?
ん?
てことはもうこの愛しき幼女ともお別れ――!?
「待ってください!! 俺まだあなたの名前も――」
「ちょ!! 抱き着かないでください気持ち悪い!!! 標準がずれます!!!」
「このまま別れるなんてイヤじゃー!! わしはまだやり残したことがあるんじゃー!!」
「素に帰るなクソジジイ!! あーもうわかりましたよ名乗ればいいんでしょ!? エィルです!! エィルって言いますぅ!!」
「エィルたん!! わしとお友達、お知り合いからでいいから結婚を前提としたお付き合いをおおぉおお」
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ーー!! ぎぼぢわるい!! 離れろジジ、あっ――――」
――10年後――
「~~♪}
近所にある花畑の中。
ワンピースの裾をはためかせ、満天の空を仰ぎながら唄う鼻唄は気持ちがいいです。
そのままお花の海に体を任せてみれば、清涼感のあるいい匂いが心の中まで癒してくれます。
(人の体でまたいいように……)
「まーまーいいじゃないですかぁ、今は私の体ですしぃ」
(その喋り方もキモイですよクソジジイ)
「あぁ、その罵倒も心地いぃ……」
はい、あれから……銀髪蒼目メガネ幼女な女神様、エィルたんと出会ってから早10年。
どうやら私が彼女に抱き着いて暴れたせいで転生の魔法に不備が生じて、エィルたんまで一緒に生まれ変わってしまったようなのです。
記憶が残っているのは不幸中の幸いでしょうか?
でなければ今頃消えてましたよ、エィルたんの人格。
ああ、女口調なのは今の私が女性だからです。
あれから10年、私の外見はエィルたんクリソツ!
それはもう見事なまでの美幼女に成長しております。
まあ、エィルたんの体が転生時の媒体になったみたいなので当たり前なのですけどね!
体の主導権は私にあるので、内面的な二重人格?
「エィル―、そろそろご飯だから帰ってらっしゃーい」
「! はーい」
はい、名前もエィルです。運命ですね。ですてぃに-ですね。
今日のお夕飯はクリームシチューと聞いています。お母さんのシチューは隠し味の生クリームが絶妙にコクを引き出していてとても美味なのです。
(早く行きましょう、わたしもお腹すいてきました)
「体ないのに?」
(主導権がなくとも五感は共有しています! 知っているでしょう!?)
「エィルたんと一心同体……!」
(それ言いたかっただけですよね?)
「えへへ」
(えへへじゃないです。冷めちゃいますよ)
「おっと! 私としたことが!」
今世には画面の向こうの二次嫁も癒しを与えてくれるフィギュアもありませんが、なんだか毎日が充実している気がします。
なんだかんだでエィルたんも納得こそしていないものの、今の環境を楽しんでいるようにも思えます。多分、身分上人と長くを共にすることがなかったせいじゃないでしょうか。
エィルたんと話していると、時折楽しそうにしているのが分かる気がするのです。
そう!つまりまだ私にも勝機があるということです!
「諦めませんよ! エィルたんと結婚するのが、今世の私の目標です!」
(いや、無理でしょう。身体一緒なんですから)
起き上がった勢いで白く華奢な腕を大きく振り上げて、魂の叫びを放ちます。
「ごぎゅるるるるるる」
そしてそんな日を夢見ながら、お腹を空かせた私は今日も家のドアをくぐっていくのでした。
銀髪蒼目メガネ幼女と添い遂げたい! かんむり @kannmuri0227
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