まず最初に言っておきたいのは古臭いという意味ではありませんし、最近の作品の質が悪いと思っているわけではありません。
私個人がノベル物の全盛期は10~20年位前の作品群であると信仰しており、それに匹敵する内容だと感じただけのことです。
ストーリーはキャラクター達がべたべたしているだけではなく、皆何かしらの問題を抱えておりそれを主軸としてストーリーが展開されます。
当然重い話も出てきますし、主人公がパッとやってパッと解決なんてことはありません。
主人公自身も色々抱えていますし、デウスエクスマキナでもないので。
ただし終着点はからりとしたものであり、後味の悪いモノではありません。
若干信頼できない語り部の主人公、生意気なようで甘ったれの重い義妹、ちょっとした縁から執着してくるストーカーなやばい女、カビが生えてきそうなジメジメしたシスター、伝奇に片足突っ込んでる絵描き、才能と光と青春の歌姫。
他にも苦労人だけどやり手のマネージャーや高校生の頃に出会いたかったバンドマン等魅力的なキャラクターは多くいます。
どれか一つでも気になったのなら確実に読むべきです。
間違いなく期待に応えてくれるでしょう。
個人的に一番好きなのは貌のない歌姫編。
青春していて大好きです。
この小説には、引きこもりのブラコン美少女ケンタウロス(胴体・後ろ足担当)、他人の不幸を啜る縁切り大明神シスター、普通にストーカー、などの個性豊かなヒロインが登場します。
そんなクセのあるヒロインたちと本作の主人公、綾野礼くんが笑いに溢れた日常を送っていく……というところのみにこの小説は終わっていません。
過去の出来事、人間関係、出会い、境遇、そういったものがこれらの登場人物をゆるく、あるいはきつく縛り、大いに悩ませています。そんな悩みを持つヒロインたちが、どこか捉えどころのないような、しかしヒロインたちに少し似ている主人公と関わり合っていくことで、共に成長していくという物語でもあります。
礼くんとヒロインがお互いに関わっていくことによって、ともに多くの人と悩みを乗り越えていくその過程に、登場人物たちの変化や成長を感じとても愛おしい気持ちになれます。
登場人物の成長が好きな方、思春期男女の悩みが好きな方、やべー女が好きな方、おもしれー主人公が好きな方にはぜひ読んでみて欲しいです。