御家断絶

 いくつかの戦争が終わった後、ある山奥に老夫婦とその息子が越してきた。疱瘡のあとを頭巾で隠した息子は両親をよくいたわり、山仕事に精を出した。父は、自分の死後は骨も遺さず灰に焼き、小川に流すよう遺言して死んだ。息子はそのようにした。母も同じく遺言し、息子は従った。

 やがて息子も死の床につき、看取った里人に、自分の亡骸は頭巾をとらずに焼くよう遺言し、小屋も焚き木にして全部燃やすように頼んだ。里人はそれに従った。そこに家族がいたことを示すものはなくなり、全てはすみやかに忘れさられた。




『青い回廊と西王子家断絶の次第』 終

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青い回廊と西王子家断絶の次第 日暮奈津子 @higurashinatsuko

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