人間のフリしてんのも簡単じゃない

紫苑

第1話

「はぁ〜〜」


俺は大きなため息をついた。


俺、須藤瑞樹は高校一年生。でも俺は、普通の高校一年生ではない。


俺の父母は、日本でいうところの『雪男』『雪女』という妖怪なわけだ。つまり俺は『雪男』ということになる。


両親は住んでいた場所から偶然家出した二人で、偶然出会い、偶然恋に落ちたとか言ってたな。


まぁ、今の俺にはそんな話はどうでもいい。俺は、今は普通の高校一年生として、普通の生活を送っているのだから。


現に今も部活で疲れて寝っ転がってゲームをする、というありがちな一コマを演じているところなのだ。


この時は、俺が妖怪共の争いに巻き込まれるなんて、思ってもなかったんだよな。




「おはよぉー」


俺はいつも通りの挨拶をした。


「お前相変わらず眠そうだな、睡眠薬飲んだ方がいいんじゃねの?」


「いや、睡眠薬は流石に......」


来て早々俺をからかってきたのが遠山有。そして有につっこんだのが鈴木康太。


「でも、毎日眠たいのは問題だよ?あんまり酷い時は病院行った方がいいと思うけど」


と優しく言ってくれているのは成河未夢。


「僕は、アイマスクつけた方がいいと思うよ。あれ、結構効くんだ」


とは、僕っ娘の相坂由乃。


俺は、“雪男は本来夜行性だ”とは言い出せなかった。


そんな話はさておき、俺たち5人は結構仲良くて、休憩時間になるといつもこの5人だし、弁当もこの5人で食べている。


もちろんほかのクラスメイトと仲が悪い訳では無いが、この5人だと、落ち着くのだ。


「お、じゃぁ相坂の言う通り、アイマスクつけて寝てみるわ」


「成果また聞かせてね」


と由乃が言い終わる前に、チャイムがなった。


俺たちは席につく。


8時35分。担任が入ってきた。


(......あれ?)


いつもと担任の様子がおかしい。いつもは入ってくるなりすぐクラスメイトの誰かを(男女関係なく)いじるのに、今日はそれがないだけでなく、かなり彼の力が抜けているような気がする。


「今日は1日中自習!以上!!」


とだけ言い放って、さっさと教室を後にしてしまった。


クラス中が一気に騒がしくなる。


「おい、聞いたか?1日中自習って、授業全くないってことじゃね?」


「ずっと遊んでてもいいってこと?」


耳を澄ますと、隣のクラスからも、その隣からも、同じような内容の会話が聞こえた。


......絶対、おかしい。


「おい、これおかしいよな」


「何がなんでも1日中自習って、聞いたことない。それに、他のクラスもそうなってるみたいだし…...」


5人全員頭を抱えた。


「......調べてみる価値、ありそうだな」

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