恐ろしい魔女を愛してしまった主人公の物語。
作者様は企画に触発されて、さらりと書いてしまったようだが、とてもそんな風には見えない。例えば森が主人公の名を知り、気持ち悪い虫がうようよいる世界観。得体の知れない食べ物。映像として想像すればとても気味が悪いし、気持ち悪いのだが、描写の力で不思議と気持ち悪さが軽減される。
そして、主人公を通して見る魔女と、他者から見た時の魔女のギャップが凄まじい。主人公にとって魔女は愛おしい母であり、伴侶である。しかし他者から見れば、「運が悪ければ」危険な文字通りの魔女なのである。主人公も、初めは魔女の食べ物として飼われていた過去があるが、あることをきっかけに、魔女は主人公を食べられなくなる。
この魔女の二面性を、同じ時間の流れの中で描く技量は素晴らしい。そして衝撃のラストを、是非ご覧いただきたい。