今更ながらのLINEノベルについての話【投稿サイトと配信サイトの違い】

この後【限定公開】で書くけど、ちょっとしたことがあってLINEノベルのことを思い出したんですが――

もう皆、忘れてるかもしれないけど、その昔LINEノベルっていう小説投稿サイトがあったんですよね。

(後に書くが、厳密には小説投稿サイトではない気がするが)

僅か1年で閉鎖したんで完全に無かったことになってるけど。

日本SNS最大手のLINEが小説投稿サイト事業に本格参入して大手出版社もそこに乗り込むという話で、小説出版業界がついにオンライン化をしていくとかなり期待されてたんですよね。


当時を振り返りながら『どうしてLINEノベルはああなったか』について考察していくけど。要因は勿論1つではなく、いくつかあると思うが、実際に投稿しようとしてた小説家目線からの意見を言うと、


『投稿サイトがどういうモノなのか分かってないデザインだった』

『そもそも小説投稿サイトではなかった』


という感じだろうと考える。

それでは具体的な話に移っていくが。

以前、別のトピックに堀江貴文氏が「クックパッドは人気レシピを動画化した方がいい」という提言をされていた話を書いたのだけど。


↓これね。

小説投稿サイトの方角から見て考える『ニコニコ動画が衰退した一因』

https://kakuyomu.jp/works/1177354054885207682/episodes/16816452220647078576


つまりクックパッドというレシピ投稿サイトがあるけど、基本は文字と写真ベースのサイトだから分かりにくい部分はあるし、クラシルがやってるように動画化した方が分かりやすいから、そうした方が成功するだろう、という話を堀江氏が語っていたのだけど。

僕個人としては『それは間違い』だと思ったんですよね。

どうしてか、というと『クラシル』は運営が作ったレシピを動画で公開しているレシピサイトで『クックパッド』は投稿者が自ら作成した料理のレシピを公開する投稿サイトだからなんです。

運営が単体で全てのコンテンツを作っているサイトは別にどういうコンテンツを配信しようが運営の勝手だが、投稿サイトはそうじゃないわけ。

投稿サイトってのは投稿者個人個人が良いモノを作り、それがユーザーによって評価されていく。一定の公平な勝負の中でユーザーにより評価されて人気を得ていくことに意味があると。

なのに運営が一部の人気レシピだけを動画化して目立つようにするとどうなるのか?

確実に不公平感が生まれるし公平な競争の場ではなくなるんですよ。

運営が特定のユーザーに肩入れして(意図しなかったとしても実質そうなっていたとしたら)しまうと投稿サイトにおける公平な勝負が失われてしまい、負けた側はバカバカしくなってしまう。

子供の遊びに大人が介入して特定の子供をえこひいきして勝たせようとしたようなバカバカしさ、とでも言えばいいのか。

別に仕事でやってるわけじゃなく、ただ趣味としてやっているだけだからつまらなくなったらすぐに止めてしまうわけ。

これは、ここを見に来るような小説投稿サイトを利用しているユーザーなら理解してもらえると思うが、小説投稿サイトで運営側がいきなり特定のユーザーを優遇しランキングが上昇しそうな施策を行っていたら絶対に批判されるでしょ?

それと同じなんですよね。

投稿サイトはユーザー一人ひとりからの評価ポイントを積み上げ、ユーザーが押し上げる形で作品の評価を上げていくことに意味があるわけ。


なんでそんな話をするのかというと、当時のLINEノベルもそういった問題を抱えていると、ちょっと思えた部分があるんですよね。

恐らくそれは運営側が『LINEノベルを小説投稿サイトにしようとしていなかった』からだと思うんです。

いくつかの資料とか見た感じでも小説投稿サイトというより『総合小説サイト』的な感じだったのだと、今からすれば思う。


うろ覚えだけど、当時のLINEノベルのデザインってLINEノベルで小説を連載しているプロ作家が書いた公式連載作品と、提携していたいくつかのレーベルから出てた作品がトップページにあって、一般の作品投稿機能は別ページだったはず。

(ちょっとうろ覚えで間違ってるかも)

実質的にはあれは小説投稿サイトではなくて、LINEノベルプロ(と提携してる一部レーベル)の小説を読ませるための小説配信サイトがベースで、その他一般の作品は別ページで小説の投稿がひっそり(新人発掘のために)存在が許されてる感じ。

そんなシステムだったと記憶している。


例えばカクヨムの作りを見ると、カクヨムはトップページには小説投稿サイトとしての機能が十全ちゃんとあるじゃないですか。

実はカクヨムにもプロの作品が読めるページがあるんだけど、そっちは別ページになっているわけで、あくまでも小説投稿サイトであるカクヨムの方がメイン。

(まぁ将来的にどうなるのか分からないが……)

カクヨムは明確に『無料の小説投稿サイトベースで作られていて、小説投稿サイト内での競争に影響を与えないようプロを別枠として隔離している』のだと考える。

けど、LINEノベルは『プロの作品を読ませてお金を稼ぐ』という、まぁ言ってみればLINEマンガとかと同じ作りのコンテンツ配信サイトだったわけ。


それが悪いって話では当然ないんだろうけど、初期段階でLINEノベルに集まってきてたような人は小説の読者というよりは小説投稿サイトの作者側の人が多かったはずで、相性が悪かった。


『プロの作品を読ませてお金を稼ぐ』という小説コンテンツ配信サイトのシステムでは最初の段階で最低限の作品数を用意しておかないと課金されないわけで、事前にプロの作家に新作を書いてもらってLINEノベルで発表したのは当然なわけだけど、それも『小説投稿サイト』として見るなら良くなかったのだろうという話。

小説投稿サイトとして見ると、サイトの運営が始まる前――コンテストとか始まる前から『書籍化』という勝者が決まってるようなモノだから勝負になってないと言えるわけで、ちょっとおかしなことを言うようだけど、小説投稿サイトとしては不公平感が強かった。

まっさらの状態でスタートしてLINEノベルで投稿されてる作品の中からプロが生まれて人気作品が有料化されトップページに並んでいく、とかなら納得感があったと思う。

何度も言うけど『小説投稿サイトとして見るなら』ね。


◆◆◆


もう1つ言うと、初期のWEB小説が売れた最初の最初の理由って『いつも見ていた小説投稿サイトに投稿されている自分らが評価していた作品が出版社に認められて書籍化された』という一種のシンデレラストーリーみたいなところが大きかったと思うわけ。

地元からスポーツ選手や芸能人が出てきたら応援したくなるアレとかも近いかも。

なんというか、小説投稿サイトってそれ自体が1つのコミュニティになっていて、緩い仲間意識・帰属意識が間違いなくあると思う。カクヨムだって緩く小説SNS化しているし、そこにコミュニティは出来ていると思うし。

そのコミュニティの中から公平な勝負の中で凄く評価された作品が世に出ることに全員が少なからず興奮を覚えていたと僕は思ってるんだけど。

これはニコニコ動画の全盛期でも同じで、ニコニコ動画というサイト自体がコミュニティになっていて、ニコニコ動画ユーザーは少なからず一体感というか緩い仲間意識みたいなモノがあって『ニコニコ動画からプロデビューしました!』みたいな人が出たら「スゲー!」ってなってたし、ニコニコ動画に芸能人が来ても「ニコニコ動画もメジャーになったな!」って喜んでたし。2chの匿名空間ですら帰属意識があったはずで、電車男のヒットにもそういうのが影響したわけ。


なんかそういうコミュニティの一体感とか帰属感が作品やアーティストを押し上げていくようなところが投稿サイトにはあって、でもサイトが大きくなっていくにつれて薄れていくんだけど。

そういう一体感が醸成される大本の『ナニカ』って恐らくだけど何かしらの『同じ土俵に立つ』ことだと思っていて。要するに『同じ釜の飯を食う』的なモノが必要なんだと思うわけ。

それが『同じ学校出身』でもいいし『同じ地域出身』でもいいし『同じ趣味』でも『同じ職業、職場』でもいいし、そして『同じ投稿サイト出身』でもいい。

小説投稿サイトで言うなら、作者でも読み専でも同じアカウント作って同じ場所に立って、誰でも自由に作品を発信出来る同じ土俵に作者も読者も有名プロ作家でさえ立つ必要があって、その中で良いモノを作った人が評価されてリアルタイムに駆け上がっていくところだと思う。

全員がその場に立って、利用しているからこそ、そこでユーザーからの評価でランキングを駆け上がった人気作品には納得感があるし、その作者は一種の尊敬を得られるのだ。

自分が同じ土俵に立ってるからこそ、認めるしかない的なところがあるわけ。


しかしLINEノベルにそれがなかったのはLINEノベルがコンテンツ配信サイトだったからで。プロとその他が明確に分かれていたからで。

つまり『Kindleユーザーの間に仲間意識やコミュニティ意識はない』というのと同じなんだろうと思う。

単純に本を読む・買うツールでしかないからね。

そこにはコミュニティも薄い一体感すらなかったわけ。LINEマンガとかピッコマとかもコンテンツ配信サイトだから、読者と作者の間にも、読者と読者の間にも一体感はないしコミュニティは出来てないし、それと同じ。

でも投稿サイトにはコミュニティ感が生まれるわけ。


小説投稿サイトにコミュニティ感がなくて、ただの小説コンテンツ配信サイトなんだったら、じゃあもうKindleでいいじゃん、BOOK☆WALKERでいいじゃん、ってな話でじゃない? ってことなんですよね。

やってることほぼ同じなんだから。

そう考えていくと、Kindleとかのコンテンツ配信サイトと投稿サイトの差ってかなり大きいと思っていて、ここのデザインをミスると全然違う結果になるんだろうな、ってのが当時からうっすら思ってた話なんですよね。


◆◆◆


まぁLINEノベルが失敗した理由は色々とあるんだろうし、これは当時の僕から見た一方からの原因の1つで、完全に僕の個人的感想ですが。


でも、小説投稿サイトだけじゃなく、投稿サイトだけじゃなく、ユーザーが積極的に関わって作り上げていく場のようなモノってコミュニティ感が非常に重要なんだろうなと、これ書いてても改めて凄く感じた感じ。

カクヨムはカクヨムネクストでこの辺りの感じを上手くやってくれりゃあいいなと凄く願ってるところです。




ということで、こっちでは書けない続きの話は↓で。


【限定公開】最近、某作品を読んで感じた表では言いにくい感想と、LINEノベルの失敗の話

https://kakuyomu.jp/users/kokuiti/news/16818093078918031118

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