小説投稿サイトの方角から見て考える『ニコニコ動画が衰退した一因』

昔は社会現象にまでなり、テレビがWEBメディアを敵視するような状況まで作り出していたニコニコ動画。

その衰退理由には様々な説があるし、一番大きな要因はYoutubeとサービスを比較されて単純に負けたから、というモノだと思う。

でも個人的には、ニコニコ動画が衰退する前。その全盛期の頃から『これってどうなん?』と思っていたことがあって。それから10年近く経った今でも『やっぱりこれも一因だったんじゃないの?』と思う説があるのだ。


◆◆◆


まず最初に結論を言ってしまうと、原因は『不公平感』だと思っている。


その昔、ニコニコ動画は動画投稿サイトであって、誰でも動画を投稿出来るサイトだったし、ニコ生が始まった後も誰でも生放送を配信出来るサイトだった。

そこはそれなりに公平な場で、面白いことをやった人はリスナーが増え、コミュニティが大きくなったし。カッコいい男の子とかカワイイ女の子の人気が上がったのもそれなりに公平だったと思う。

有名人が投稿して人気になるのも、それはそれで公平だったと思う。

人気のある人にはちゃんとその理由があったわけで、それに嫉妬することはあっても多くの人にとっては不公平感はなかったと思う。

しかしそれが大きく変わった出来事があった。

『運営生放送』だ。

ニコニコの運営が生放送の番組を作り、一般ユーザーの放送とは完全に別枠の特別扱いでトップページにデカデカと載せた。

当然、多くの人の目に留まり、毎回最大クラスの視聴者数を稼いだ。

そしてその運営生放送に、当時、名前が売れてきていた生主を呼んだのだ。

まぁそれは仕方がないというか、ライブ配信をやっているサイトなので当然そうなっていくモノだとは思うけど。

しかしニコニコはそこから一歩踏み込み、その運営生放送の中でトークが上手かった生主をレギュラー化したり、番組をやらせたりしていった。そしてそれを何年も使い続けたことで彼らは半タレント化していった。

当たり前だけど、そうやってピックアップされた生主は多くの人に認知されることになって自前の生放送の視聴者数を爆増させ、人気も鰻登り。

これこそ当時のニコ生における『不公平感』であり、衰退の一因(勿論これは主要因ではない)になったと考えている。


「それって人気のある人が使われただけでしょ? それを批判するのはおかしくない?」


と、思われるかもしれない。

そう言われてしまうと、そうかもしれない。

いや、それは間違いないと思う。

しかしこれはそういう話とは少し違うというか、正しいとか正しくないとかではなくて『不公平感がある』という話なのだ。


ここでタイトルの話をしようと思う。

小説投稿サイトの話だ。

例えばこのカクヨムで人気のある作家が、人気があるからという理由でカクヨム運営に認められ、カクヨムのトップページにデカデカと表示される連載をスタートさせたとしよう。それでカクヨムユーザー、特に投稿者の皆様はそれを許してくれるだろうか?

色々と考えてみたけど、そうなったら某所でかなり批判されそうな気がする。

それが良いか悪いか、正しいか間違っているか、正当か不正か、という話ではなくて、それには不公平感があるからだ。

そういう話をしている。

(とか言いつつ、そういう話が自分に来たら絶対に受けるとは思うけど)

これがプロの世界での話。例えば雑誌の連載とかWEBメディアの連載の話なら事情は違うと思う。公平だとかそんなモノはへったくれもなく、運営も作家も人気を得るために全力で取り組んだ結果、そうなったというだけの話になるかもしれない。

しかし『投稿サイト』という属性では『公平性』が重要な要素だと思うのだ。

同じ土俵の中で全員が褌一丁でがっぷり四つが投稿サイト。そこで行司が特定のスモウレスラーに味方して、どこぞの無双ゲーのように軍配からビームを放ち始めたらそれは公平ではない。


運営生放送に出ていた生主は運営からギャランティーを貰いながら運営生放送で自分の宣伝も出来てファンも加速度的に増やし続けてるのに、その他の一般生主は月500円を運営に払って生放送をさせてもらっている。その状況。

それがあの時の不公平感だったと思う。

この不公平感を認識してしまうと虚しさを感じるようになると思うのだ。

そして投稿意欲が薄れていってしまう。


◆◆◆


以前、堀江貴文氏がクラシルの成功とクックパッドについて語っていた動画の中で、クックパッドもクラシルのようにレシピの動画化を進めた方がいい的な話をしていたと記憶している。

人気レシピの上位を運営が動画化していけばいい的な。

が、僕的にはその意見には反対なのだ。

その理由はここまで読んでくれた人なら分かると思う。

クラシルはレシピを動画で見られるサイトであって、クックパッドはレシピ投稿サイト。この違いが大きい。

もしクックパッドが人気上位レシピを動画化したとしよう。そのレシピはもっと人気になって動画化されてないレシピとの差が大きくなるだろう。動画化された人は喜ぶはずだ。

しかし逆に動画化されなかった投稿者からすれば不公平感が大きくなるはず。

運営がお金をかけて動画化して宣伝してもらえるレシピがあるのに、自分はなにも貰えないのにわざわざ労力をかけて投稿し続けている。私はなにをやっているのだろうか?と虚しくなってしまう。

そうなるとバカバカしくなってしまって投稿を止めてしまうかもしれない。

弱肉強食のプロの世界ならともかく、投稿サイトにおいて一般ユーザーの意欲を削ってしまうというのは致命的だと思うのだ。


◆◆◆


という感じのところが自分の考えなのだけど、皆々様はどう思われただろうか。

念の為に言っておきたいのだけど、別にこれは特定の誰かを批判するような話ではなく、当時のニコニコが取った選択の是非に関する話をしたかった。ということをご理解いただきたい。


あの当時の僕が感じた感覚。

確かにあの瞬間、ニコ生が別物に変わった感があった。

それまで、ニコニコユーザーは一般ユーザーでも人気生主でも仲間感があった。同列という言い方はちょっと違うけど、全員が近い関係というかそういう雰囲気。

でも、運営生放送で人気生主がピックアップされるようになってから人気生主がタレント化した。

テレビに出ているタレントに近い存在で、僕ら一般ユーザーとは一歩も二歩も離れてしまった気がする。それが良いとか悪いとか、そういう話ではなくて、公平性が保たれなくなって、投稿サイトとしては終わったのではないか。というのが僕の意見。

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