ストリートファイターリーグ2021でレギュレーションが変化した理由から見るコンテンツ産業の変化

また今年もストリートファイター5で行われるリーグのレギュレーションが発表され、新しいシーズンが始まるのだけど、そのレギュレーションが今年は大きく変更されており、まぁ色々とアレやコレや言われていたりする。


一番の変更点は、これまでは国内最強格の6人のプロ選手がドラフト形式で選手を指名し自らのチームを作ってリーグを戦い、上位チームが世界大会に進む、という方式だったのが、今回からは所属チームごとの参戦となったことだろう。

それだけ聞くと一般の人は『だからどうしたの?』という感じになるかもしれないけど、これってもしかするとeスポーツ界だけでなくコンテンツ産業が新しい方向に向かっているその流れの一歩なのではと感じるのだ。


◆◆◆


順を追って説明しよう。

これまでのSFLは毎年毎年ドラフト形式でチームメンバーが入れ替わる形式で、新人育成を求められたり、若手選手を1人入れないといけなかったり等、年ごとの特殊ルールが定められ、良くも悪くも一種のお祭り感のある大会だった。

しかし今年からは企業によってスポンサードされたチームが戦う形式に変わり、それぞれのチームがスポンサーの名を背負ってリーグを戦うことになったのだ。

要するに、野球とかサッカーみたいなスポーツと似た形式になると考えていいと思う。

当然ながらスポンサー企業は宣伝のために自チームを勝たせたい。

勝たせるには良いプレイヤーを集める必要がある。

では、良いプレイヤーを集めるにはどうするか?

手っ取り早いのは引き抜きだろう。


そこで今回、真っ先に動いたチームがあった。

どことは言わないが、皆様ご存知、我らのK社チームだ。

元々有していたチームに即行で日本最強格プレイヤーを引き入れ、早々とダントツ最強チームを作ってしまった。

どうやら事前にこれらのレギュレーションの変更を知らされてなかったプレイヤーもいるようで、その辺り色々とあって業界は混乱している様子。

それに関する皆々様の反応はお察しの通り。

しかしながらレギュレーションが所属団体ごとのチーム戦に変わったとするならだけど、これは至極当然のムーブと言ってもいいと思う。前回までの公平に戦力を分散させるルールから考えると、いきなり変わった今回のルールは不公平に見えるけど、今回のルール単体で考えるとそうなるだろう。

(そのルール変更が事前に全チームに周知されてなかったっぽい不公平的なことは、とりあえず置いといて…)

結局、発表前に有力選手を獲得したチームと、元々多くの選手を抱えていたチームが早々とフルメンバー(4人)を完成させ。チームの人数が4人に満たない残りのチームでプロ選手をドラフトして、人数を埋める形式になったっぽい。

それに関する皆々様の反応もお察しだ。


◆◆◆


※ここからは個人的な予想になります。


で、今回のレギュレーション変更の意味を少し考えてみた。

勿論、大きな意味はない可能性もあるけど、これに合理的な意味が存在すると仮定した場合の話。


これ、恐らくだけど、SFLというeスポーツの大会に今以上の沢山のスポンサーを呼び込むためにこうしたんだろうな、と。


つまり、

①スポンサー企業が自チームを勝たせるためにお金を使って選手を引き入れる。

②選手は契約金や年俸によってお金を稼げる。

③お金を稼げるからプレイヤーが集まってくる。

④人が集まるからゲームが活性化し、大会が盛り上がる。

⑤参戦するスポンサー企業が増え、チーム数が増える。

⑥大会の価値が上がり広告収入が増える。

そういった流れを想定しているのではないかと。


勿論これは僕の予想でしかないのでハズレてるかもしれないけど、もしこれが正しいとすれば今年1回で終わるような変更ではなく、今後もこのレギュレーションが続き、例えばJリーグみたいなクラブチーム制になっていくんじゃないのかと。

(スト5は来年までという噂なので、その後はどうなっていくのかみたいな問題はあるけど)

しかし、何人かのプロの人の話を(動画とかで)聞く限り、去年までの流れがあるおかげで「なんか今回は変なレギュレーションになってるな」とか「ちょっとチーム分けが不公平なんじゃないの?」という感じの意見がオブラートに包まれて出てくるだけで『このレギュレーションが今後も続く可能性』についてはあまり考えられてないように感じた。

でももし、このレギュレーションが常態化したなら?

そうなるとストリートファイター含め格ゲーマー業界は激変する気がするし、そうなったら大打撃な予感がするから念の為に考慮した方がいい気がするけど、あまりそれが考えられてない感じ。

なので1つの可能性を指摘する的な意味でこれを書いてみようと思った。


ではもし、今回のレギュレーションが継続したとして考えよう。

既存のチームのいくつかは今後、苦しくなるかもしれない。

それはチームとしてもそうだし、人間関係的な意味でも。

当然ながら格ゲーは個人競技なので、これまではチームに入っていても入ってなくても実力さえあれば関係なかったと思う。しかし、今回はチームに入らないとリーグに参加出来ないし、入るチームによって明確に待遇やら金銭などで差が出るようになるかもしれない。

そうなると、これまで所属していたチームを抜けて別のチームに移籍する的なことが頻発するだろうし、良い条件を提示出来ないチームは運営が厳しくなってしまう。

老舗チームはそのメンバーのキャラクター含めて愛されていたので、残念なことになるかもしれない。


恐らくゲーム会社的にはゲームのプレイ人口やプロ人口も増やしたいと思っているはず。しかし現時点での格闘ゲームにはプロ人口が増えにくい理由があると考える。

例えばストリートファイターに関しては、年末に行われるカプコンカップが集大成的な大会で、そこに出る32人に入ることが目標になるけど、それだとその32人とそれを争う+20~50人ぐらいが注目される選手で、世界でも100人程度ぐらいしかスポットライトが当たる選手がいなかった気がする。

しかし今回のSFLだと既に日本だけで8チーム✕4人で32人がチームに所属して戦うことになったわけで、もし今後チーム数が増えればプロとして必要とされる人数は大幅に増えていく可能性がある。そうなればプロとしてお金を貰える選手の数も増えて業界の規模が拡大するだろう。


個人的には、レギュレーションが発表される前の各チームの動き的に『事情』を知らされているチームと知らされてないチームがある気がするのだ。

だって明らかに事情を知ってないと出来ないムーブをしているチームがあるし。

なので『事情』を知ってないチームは運営に確認取った方がいいのではと感じる。

ここまで書いてきた予想がもし仮に当たっていた場合、準備出来てないチームは大きな打撃を受けることになってしまうから。


◆◆◆


ここでやっとタイトルの話になるのだけど。

まず、何故こういった流れになるのか?という話。


実はコンテンツ産業の多くは既存の収益モデルが崩壊しかけてる、という話が出てきている。

例えば分かりやすいところで言うと、出版業界ならまず本が売れなくなってきているし、アニメとかでも円盤が売れなくなってきてるみたいな話があるし。それらの違法ダウンロードや違法サイトでの視聴などが問題になっているけど、これを根本的に解決出来るような手段が今の所、見付かっていない。

ゲーム業界で言うと、ゲームのグラフィックが上がって開発費は上がってるのに売上は変わらないという話とか、ゲーム実況を見て満足してゲームを買わない人が増えたみたいな話も頻繁に聞くはず。

出版社が小説投稿サイトに注目するのも、普通に売っても本が売れないから『無料で公開する』という手法に気付いた、というのもある。

凄く凄くおかしなことを言うと、現在は『コンテンツを作って売るというビジネスモデルが崩壊しかかっている』のだ。


つい先日、セガが『バーチャファイターeスポーツ』というゲームを出した。

これは過去のバーチャファイターのリメイク版で、PS4版はなんと最初からフリープレイとなっている。アーケード版にしてもAPM3というネットダウンロード方式専用で導入コストがかなり安いようだ。

過去作の移植ならともかく、お金をかけて作ったリメイク作品を無料で出す意味はなんなのか?と考えると、これは恐らく普通にゲームを作って売るというビジネスモデルを(格闘ゲームに関しては)止めたんだと思う。

この作品は名前にeスポーツと入っているように、eスポーツとして成立させていくことが最初から考えられているのだろう。その場合、ゲームに値段を付けて売ると単純にeスポーツとしての普及にとってはマイナスになるので無料にしたのではないか。

ではこれでどうやって売上を出していくのか、というと、まだ発表はされてないので分からないが、恐らくストリートファイターでやっているようにセガがeスポーツの大会を主催してそこのスポンサー収入で稼ぐという形を目指すのではないかと。


最近、eスポーツという言葉をよく聞くようになってきた。

メディアでもそういった特集が組まれるようになっているけど、これは恐らくゲーム業界的にもそちらに進みたいという思惑があるのではないかと思う。要するにゲームを作って売るというビジネスモデルから脱却して新しい形を構築したいということだろう。

もしかすると、今後はバーチャファイターのようにeスポーツ系のゲームは無料で配布されていくことが主流になるかもしれない。


個人的に、小説家にもこういう新しいビジネスモデルが生まれないかな、とか思いつつ模索しつつ数年が経ってるんだよなぁ……という愚痴とともに終わりたいと思う。

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