イサムの孫の手

@MIKKIM

第1話 プロローグ

イサムは、8人兄弟の次男として生まれた。実際には、双子の妹の一人が生まれてすぐに亡くなってしまったから、7人兄弟だ。


イサムの両親は、戦中戦後、満足な食べ物がない時代にホルモン焼き屋をはじめた。それが見事にあたり、その儲けで喫茶店、モータープール、パチンコ屋や洋装店と、徐々に手を広げ、事業を拡大していった。


さらに時代は高度成長期。先見の目があったイサムの父は、プラスチック再生工場を始め、これも順調に伸びていき、土地を買い占めて、工場を広げていった。


行動力は父が管理は母がと、このバランスがよかったのだろう。何十人もの従業員を抱え、お手伝いさんやお抱え運転手付きの高級車で送り迎えといった豪邸生活を送っていたので、巷では知らない人はいないほどの成長ぶりだった。


ただただ子供達には不自由なくという思いだけで、がむしゃらに働いて財を築くことに必死だった両親。そんな両親のもとで、お金には困らなかったが、留守がちなで放ったらかし状態の環境の中で、イサムは数々の波乱を巻き起こすこととなる。

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