第2話 2年目にしてイベントが起きました

(あの少年のことは後でギルドスタッフにでも聞けば少しは教えてくれるだろう。

(今の姿なら彼は俺が日本人だと気づかないはずだ、わざわざ他の転移者に会うのは面倒くさすぎるし)


この世界に来てから得たスキルの1つ"偽装"には自らの姿を変える効果もあった。実際今の姿は金髪紅眼だ。

こちらから彼に話しかけない限り絶対的に気づきはしないはずだ。


そんなこんなを考えながら街を抜け近隣の森へと入る。


いつもの如く周りに人がいないのを確認してから"飛行"スキルを使い奥深くへと向かっていると、見慣れない物があるのを発見した。


(馬車・・・? にしても豪華絢爛な

もしかして・・・イベントか!)

よくある美少女の奴隷なり王女様なりがいるパターンかもしれない、そんな邪なことを考えつつも馬車の方へと向かうことにした。


近づいてからよく見るとまだ生存者はいたようで、どこぞの国の紋章だか家紋のついた鎧をつけた幾人かの兵士がオークやサイクロプスと対峙していた。

馬車の周りには兵士と馬がしに重なってい。この状況から察するに別段兵士の数が少なかったわけではないのだろう、想定外のことだったのだ。元よりこの馬車がいる場所は森の奥ではあるが道から外れている訳では無い、本来このような街道に魔物は出ないものなのだから。


(あれは・・・紛れもなく美女が乗っていてってパターンじゃないか!

(苦節2年にしてやっと・・・!?)


馬車から少しばかり離れた地点へと降り立ち目的の場所へと高速で走る、美女救出という幻想を抱く金髪紅眼の男の姿があった。



・・・・・


馬車へと着くと、どうにか兵士たちは粘っていたようで馬車にはまだ魔物たちの手は届いていなかった。


「さて久々に思いっきりいってみますか!

「彼方ノ剣より放たれるは、耀みの剣斬『剣より暉は剣撃フォテイノ・アンスウェラー!』」


レハルが魔物たちへとひと振りの剣を向け詠唱を完了させると無数の光剣が現れ、兵士たちを避けつつ魔物を襲っていった。



レハルの持つ剣の1つ、ケルト神話における光の神ルーが持つ剣『アンスウェラー』。どんな物をも切り裂きその剣の輝きは敵の戦意を喪失させると言う。


・・・

あんぐりと口を開け呆然としている兵士たちの前には先ほどまで自身らを絶望の淵へと誘っていた魔物達の屍があった。


「な、何が起こった!?」

暫くしてからただ開けていた口が動き始めた。


「大丈夫ですか?」

正直言って魔物を一掃したはいいが彼らにどんな言葉をかければ警戒されないのかなんて検討もつかなかった。


まあそれから剣を向けられたりしつつも冒険者ギルドカードの提示などを行い信用は勝ち取ることができた。

(さて、あとはこの馬車の中によるのだけれど、、、)


などと考えているとカチャッといった音とともに馬車のドアが開いた。


「姫っ、魔物が一掃されたとはいえまだ、」

そう兵士が言いかけながらも"姫"と呼ばれた女性が目の前に現れた。


そうそこには艶やかな銀髪とレハルと同じ紅眼の美女がいる、はずだったのだが、、、

(どうなっている、、?なんなんだコイツは)


目の前に現れたのは銀髪、紅眼ではあるが凡そ100kgはあるかという体格、それに何より顔がなんとも、、、

「どうもありがとうございます。私はテルメ王国第二王女の、、ってあら?」


(あれは無い!あれだけは絶対に無い!!)

人としては最低かもしれない、けれどあのこの世のものとは思えないほどの醜悪な顔はちょっと、、、

挨拶されるよりも早く、顔を見た瞬間に転移魔法を使いその場から立ち去っていた。


「それにしても適当に転移魔法なんて使うもんじゃないな、、、

何処だここ?」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

異世界にて孤独 飛騨山 @Suzuki_kari

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ