これはメイドじゃないけどさ
高校の文化祭でメイド喫茶なんてあるわけがない。あんなのはフィクションだけの世界なんですよ。
そんなことを思っていたのは僕だけではないだろう。
なのにあれよあれよとノリだけで決まっていくメイド喫茶。
服なんて作れるわけがないだろうと言っていたら、何かチートレベルでコスプレ衣装を作るのが趣味の奴がいて、女の子の服を作ってしまう始末。
キャーなんて女子が言いながら採寸されていく。普通なら嫌がるだろ。
それも委員長がノリノリだったからだろうか。あとクラスのリア充共がチートレベルのソイツをノリノリにさせたせいなんだろう。
まあ俺なんだけどな。
リア充が俺の趣味をなんつーか、イベントの写真でみてばれたというかなんというか。チクショウ、何で俺だってばれないようにバッチリきめてたのにな。
気づけば文化祭前夜。大体女の子たちの服もできて、俺はお役御免。服のチェックのために夕方までやっていたものの、もう帰る直前といったところまで目途はついたとは思える。
クラスメートの準備も大体済んだみたいで、お菓子やら机の準備も終わって、最後の買い出しの連中がスーパーに行った。
ほとんどの人がいない夕方の教室は寂しい。何というか、そっちばかりに力を入れて、服は俺に丸投げとか涙が出そうだね。
「ヨッ、やっているかね」
「最悪」
「いいじゃん、眼鏡の目立たない君のスキルがついにお目見えできたんだからさ」
と言いながら、俺のコスプレ写真を見つけた
その姿はメイドとは思えないミニスカートに和風のを加えたようなまさにコスプレメイド服。改造されたその服装はどう見てもメイドさん。どこからどう見てもオリジナルのメイドには見えない。
茶色っぽいセミロングの髪にヘッドレスをのせた姿はちょっとかわいいなんて思わせてくれるものの、まあ、それだけのものだよ。
体はナイスボディなんていうことを自称で言っている女子高生だから、縊れた腰に胸もそこそこ。
俺の服のおかげだな。何てな。
「顔赤いね。あ、私のパンツ見えちゃった?」
「見るわけないでしょ。そんなことしたら、マジで言いふらすだろ委員長」
「私そんなに信用無いの?」
そのこびこびに満ちた笑顔と俺に押し当てられた人差し指に割と近い委員長の顔。
俺はそんなのには騙されない。
「リア充は信用がない」
「リア充って、君もこんなかわいい女の子と二人っきりの教室。しかも和装メイドのかわいこちゃんだよ。ホレホレ」
「女の子がそんなスカートをチラチラさせちゃいけません」
「それ先生のセリフだよ。おかしくない?」
「おかしくない」
僕は強く言い放つ。
こういう時は強く言わないと色々と誤解を与えてしまうのだ。
高校でムッツリスケベとか、もう色々と恥ずかしいものであるのだ。情報ソースは僕。
「ま、いいか。そんなことよりもさ。練習突き合ってよ。ほら、机に座ってなくて、立ってさ。そこのテーブル座って、ほらご主人様」
「ご主人様じゃないってば。僕はクラスメ、むぐっ」
委員長がどこからともなく取り出されたクッキーを口に入れられて、黙らされる。
「はいはーい。クラスメートと練習ですね。練習」
どうやら、僕はリア充には勝てないらしい。
しかも、そのクッキーの後ろには無防備なあの谷間が。
「えっち」
胸を隠して、夕日に照らされたその顔はとてもかわいくて、真っ赤な頬を膨らませた姿はどこか、誰にも見せない僕だけのじゃなくて、だ。
「ちょっと、見せたのは君が」
「はいはい。メイド様のサービス。これが服を作った報酬だね」
小悪魔チックな人差し指を立てた彼女。キュートな笑みと夕方の和風メイドさん。
絶対見られないメイドさんには見えないメイドさんの笑み。
その顔に僕は勝てない。
可愛い子と自分 阿房饅頭 @ahomax
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