可愛い子と自分
阿房饅頭
アルビノの女の子は不思議ちゃん
隣にいるその子はちょっと変わっている。
何故なら、彼女の髪は白くて目が赤い。肌も白くて、白人めいた感じのする彼女。
いわゆるアルビノってやつだ。
体が弱そうだなんてことをよくいうこともあるが、目が悪いのがあるくらいでたまにサングラスをつけたりして大変そうだったのを覚えている。
高校生のクラスメイト。
気づいたら3年目の春。
僕はふと、彼女と3年一緒だということを思う。
教室の中、彼女は外を見つめていた。授業は上の空で裏庭のどこかを見ている彼女は絵になる。
「何か用?」
ふわりとその腰まで伸ばした髪を揺らしながら、彼女が話しかけてきた。
その白い肌もあいまって、妖精みたいだとよく言われる彼女。
3年間一緒だったけれども、そのなれない顔はどこかいたずらっ子のようでちょっとムッとしてしまった。
「何でもないよ」
なんてことを僕は返していた。
我ながら子供っぽい返し方だとは思う。
まあでも、僕は素直な純情ボーイなんだ。それくらい許してほしい。
「強がり言っちゃって」
「はいはい」
なんてやる取りをしていると授業終了のチャイムが鳴る。
今日も終わりだ。
6時間目のチャイムが鳴る。
4月の半ばの雰囲気はゴールデンウィーク前で浮ついた感じがあって、みんな気が抜けている。
かくいう僕も同じ雰囲気に飲まれて、欠伸をする。
「みんな受験生なのにね」
口をぷぅと膨らませる彼女は白い髪をさらりとなでる。
「そういう君も単語帳でも持っているとかしないの」
「私は頭がいいし、家で勉強しているから大丈夫。あと、予備校行って何とかしているからね。努力はしている。けれども、白鳥のように水面下で努力をしているのだよ。私の髪だけに」
「ま、そういうことにしてあげるよ」
「えらそー」
偉そうにさせてもらうよ。
僕も受験生だけど、予習復習をきちんとして今のところは模試で志望校はA判定。
問題はなしだからね。
「何かもっと偉そうなことを思っているね。ちみちみー」
「指でつんつんしてくるとかあざといことをしてくるなよ」
「こんなかわいい子にされるなんて嬉しくないかな。ホレホレ」
まあ、悪くはないけれども。周りの目がちょっと恥ずかしい。
「ところでさ、さっきは何を見てたんだ」
「木だよ。ほら、メタセコイヤ」
そういえば、何故か中庭にはメタセコイヤと呼ばれる木がある。
生きた化石とか言われているらしい。
わりと裏庭の真ん中ある木で背が高いくらいしかイメージしかないのだが、それだけでしかない。
「あれを何で?」
「生きた化石何てかっこいいじゃない。私好み。何ていうか、恐竜の世界というか、異世界にも行けそう!」
「お、おう。またか。異世界病か」
「いいじゃん。流行っているんだし。ほら行ってみようよ!」
「アホか!」
何てことを言われて僕はホイホイついていく。
そりゃまあ、かわいい女の子に手を引かれていくなんて言うのはもてない男の子にとっちゃあ、ご褒美ですよ。
「ほら、おっきいねぇ。私みたいにちっこい女の子から見たらほんとびっくりするほど背が高い、ってあら」
メタセコイヤの木漏れ日を見上げたふらりと彼女がふらつく。
「言っちゃこっちゃない。目が弱いんだろ。日光浴びたらきついって言ってたし」
「アッハッハッ。私は弱いんだねえ」
弱い。とはいえ、それくらいだったら常識の範疇内だ。むしろ女の子と男の子ならあざと可愛い。
「ね、私ならこの弱弱しい容姿でも異世界に行ったら強くなれるのかな」
「知らないよ。そんなのWEB小説とか漫画とか作り物の話だから」
「いいじゃん。それくらい言ったって減るもんじゃないし。たのしもーよ! 人生、1回きり!」
そう言って、僕の背中をバンバン叩く姿は人生を楽しんでいるように思えてしまう。
ま、僕もそう言いながらこの状況は役得のような気がしているのは内緒だ。
「さあて、どうでもいい話もしたし、帰ろうか」
「えーまだだよ。ほら、四葉のクローバー!」
「フリーダムだなあ。しかもそれ、3つ葉だし」
「いいじゃん。細かいことは考えたら負け! 私のような白い花を咲かせる花だぜ! 何というか、幻想的な花に異世界の入り口っぽい背の高い木!」
そう言って彼女はそのクローバーを摘み取った。
「はい、あげる」
その満面の笑みはいたずらな妖精。そのまま。
けれども綺麗な笑顔。非常に楽しそうな姿はきままな白猫。
ある意味異世界の冒険者が休んでいるようで。
「残酷だよなあ。クローバーも摘み取られて」
そういって彼女は白い髪を揺らして、舌を出す。
冒険者希望の白猫がクローバーをもって、くるくると一回転する。
「バーカ」
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