16.罠迷宮とはらぺこ少女
海底王国の蘇生ポイントにて。
「あーもう! 無理でしょあんなの!」
「いや、1人罠解除系の称号持ってるだけで多分楽になるんだろうけどな」
「まさかPvPイベントの入賞者1位2位と一緒に行って一階層で全滅するとは……」
そう。
スプルたちは、ダンジョンの一階層で数多の罠の殆どに引っかかり死に戻りしていた。
彼女達の弱点「全員ダメージディーラー」が露呈していた。
「どうしたものかな……」
「野良でもいいから盗賊系のプレイヤーを入れたパーティー組んだ方がいいですよね」
「それはそうなんだけど、その……」
「野良のシーフ職の人はもう狩られまくってアレしか残ってないからね……」
2人が見つめる先には。
「おなか……すいた……」
うつ伏せに倒れた、行き倒れスタイルでなんとも情けないことを呟く幼めの少女がいた。
「いやいやいや! 確かに格好は完全にシーフ職だけども!」
「そうだよな、流石にあそこまで抜けてそうなやつに罠の解除とかお願いしたくないよな」
「あ、ノーラ、あの子シーフ職だったの? 声掛けてくるね」
「「スプルー!?」」
スプルはてくてくと歩いていき、うつ伏せの少女に話しかける。
「お腹すいたの? これあげるよ!」
食材アイテムのクリームパンを取り出して渡す。
甘いものは乙女の必需品である。
「ありがとなのです……はむはむ」
小動物さながらに、クリームパンを頬張る少女は、ごくんと飲み込むと、立ち上がって頭を下げた。
「どうもです。私はリリーと言うですよ。よろしくなのです」
「私はスプル! よろしくね」
スプル、と聞いてリリーは少し首を傾げた。
「スプル……聞き覚えがありますですね。あぁ、
「えっ……!?」
「私も持ってますです。これです」
ウィンドウを呼び出し、可視化したものをスプルに見せる。
【はらぺこ罠師+3934】
解除した罠の数だけ強化される。
状態異常【空腹】になるスピードが900%上昇する。
《
《
今までに解除したことのある罠を生成する。生成した罠はこの称号の強化値に対して通常の称号の強化値換算で1%分の威力や効果を持つ。
「これはまた……随分と独創的な称号だね……」
「一応アクティベート前に効果を見せてくれましたですよ。削除可能でしたし」
「なるほど、私の時には出なかったのにリリーちゃんの時は出たと。運営め、どういうことだ」
スプルは1人で憤慨していた。
そこに、ノーラとアーサーがやってくる。
「スプル、目立ってるからやめな」
「ノーラ。でもー」
「いや、ほんとにやめた方がいいと思うよ。ちょっと恥ずかしいかもな感じだし……」
「あ、アーサーさんまで……。わかりました」
2人をみて、目を丸くするリリー。
「アーサーにノーラ。また有名どころですね。ギルドでも作るですか?」
「ご名答。そこで相談なんだけど、君も私たちのギルドに入らない?」
「私が……ですか? 食糧事情が大変なことになるですよ」
「その分は俺たちが狩ってくればいい。罠解除のスペシャリストを手に入れられるのならその位は安いもんだよ」
「別にスペシャリストという訳では無いですが……。このリリー、光栄なお誘いを是非受けさせていただくです」
「ありがとう。助かるよ」
アーサーとリリーが握手をし、ここにまた1人ギルドメンバーが増えたのだった。
「スプル、よくやったよー。すごいメンバーを加入させることが出来たね」
「そ、そうかな……だったらいいんだけど」
「それで、皆さんはあのダンジョンに行くですか?」
「ああ、ギルド設立クエストに必要なアイテムをボスがドロップするんだ」
「なるほどです。あのダンジョンの罠は多い上になかなか凝ってますですからね。まあ私も一階層で死んだですけど」
「え、罠解除出来るのにどうして?」
「私に戦闘は期待しないでくださいです。この国に来ることが出来たのは7人パーティーにお情けで入れてもらったからですし、戦闘力はゴミ同然ですので」
「なのに強化値は4000近いんだ……罠だけ解除しすぎでしょ」
「もはやそれも褒め言葉なのです」
そうこう言いながら、ダンジョンの前に着く。
途中でリリー用の食料も大量に買い込んだ。
「じゃ、れっつごー!」
新たにひとりを加えた4人で、ダンジョンに繰り出す。
そして、3歩歩いたところで、
「罠です」
「「「早いな!?」」」
「皆さんここのダンジョン名見なかったですか? 『トラッパーズ』ですよ」
「ガチ罠迷宮だったんかい」
リリーは、鮮やかな手並みで罠を瞬時に解いた。
「ただ、一階層の罠はよほど間抜けな数に引っかかったりしない限り死んだりはしないのですが」
全員が若干顔を伏せた。
「え、まさか……」
「リリーちゃん。何も聞いてはいけないよ……」
「は、はいです……」
携帯食料を食べ続けるリリーが罠を解除する傍ら、暗い目をしたMTの上位者たちが魚系Mobたちを狩っていく光景が、しばらく続いた。
そして第3階層のボス部屋前までたどり着く。
途中、見たことのない罠にリリーが興奮しまくっていたが、お腹が空いたのかすぐ落ち着いた。
「あ、そこ即死罠あるので気をつけてくださいです」
「危なっ! ボス部屋前にそんなもの置かないでしょ普通!?」
「何しろ罠迷宮ですからねー」
「これはもうそんなレベルではないよね、リリー」
即死罠を解除し、ボス部屋を開ける。
そこには、海蛇型のボスMobがいた。
そしてそのボスは、
「体が水……このダンジョン、どこまでも俺たちの不得意分野を突いてくるのかよ!」
称号【庭師】は地味な名前に似合わずかなり使えました 赤瀬青 @kanzakismst
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