また逢いましょう

大樹海

第1話

 私はいつも人と別れる時には決まっていう言葉がある「また逢いましょう。」その言葉を使う時はその人とは二度と逢わない時だ。そんな出来ない約束みたいなのを言うものじゃないといつも心の中で思っている。私の職業は殺し屋、女性の殺し屋。私は別れとは職業柄仕方が無いと思っている。だが、虚しい。

 

 

ある日、街中を1人の髪がショートカットの男前の女性が歩いていた。彼女の名前は飯田 涼子だ。

 その彼女の携帯に一本の電話が入った。電話の相手は彼女の上司で仲介人の坂町 道重だった。道重は彼女をよくサポートしてくれる。「もしもし、どうしたの道重。仕事?」と聞くと道重は「あぁ、そうだ」と一言。続けて「今日の夕方5時にアジトで打ち合わせするからなちゃんと来いよ」と彼女に強く言い聞かせた。彼女は面倒くさそうに「はいはい」とだけ言って電話を切った。そして、彼女は自分が羽織っている革ジャンの裾を捲り上げて時計を見る。彼女は、また再び歩き出した。

 

 夕方5時過ぎ、とあるBARのカウンター席に道重がイライラしながら座っていた。カウンターにはBARのマスター斎藤 繁と、このBARの店員の坂井 牧が居た。そして、テーブル席で緊張気味で座っている若い男性が1人。「あのバカ、ちゃんと来いって言ったのに。新人も来てるから紹介も兼ねての打ち合わせだったのに」と道重はブツブツと呟いている。


 すると、BARの扉に付いている鈴がカランカランと鳴って開いた。入って来たのは、やはり涼子だった。それを見るや道重は「遅い!あれほど時間を守れと言っているだろうが」と説教をしたが涼子は「はい、はーいすいませんでしたー」と涼子は反省ゼロで謝った。その態度を見て道重はイラッと来たが諦めたのか「はぁ」と溜息をついて本題に入った。

 

「やっと人が揃ったところで依頼の内容に入って行く前に新人を紹介しよう。」と道重が話したらテーブルに座っていた若い男性が立ち上がり喋り始めた。「は、初めまして!足立 正親っていいます。足を引っ張らないよう頑張ります!」少し辿々しいが元気のいい青年だと思わせるぐらいの気持ちのいい挨拶だ。道重は正親の挨拶が終わると正親に話し始めた。


 「一応、初めてだろうからここの事務所そして、メンバーの事を説明しておくぞ。まず、ここの事務所の名前は『GRAY』って言うんだ。世間への表向きは何処にでもあるBARだ。しかし、裏では殺し屋事務所として名が通っている。次にメンバーの紹介をする。ここのBARのマスター兼、事務所の所長の斎藤 繁だ。こう爺さんだが腕の立つ殺し屋だ。次に所長の隣に居るのが坂井 牧だ。こいつは見ての通り女でBARの店員で情報屋として働いている。そして、遅れて来たこいつが飯田 涼子だ。ここのエースと考えていいけど、時間にルーズなのがたまに傷だな。」と言ったら涼子が「うっせぇ」と道重に言った。そんな事を無視して道重は話を続けた。「最後に、俺が坂町 道重だ。ここの事務所と依頼人との仲介役をしている。まぁ、ざっとこんなもんだが分からない事があったら俺か、牧に聞いてくれ。」と話し終わると正親は「はい!」とやはりいい返事をした。


 「次に依頼の内容について説明する。」と道重が言ったら正親が唾をゴクリと飲み込んだ。「今回はある麻薬密売組織の首領の殺害だ。場所は海岸にある貨物倉庫だ。そこで、麻薬の取引が行われるからそこを襲撃する。今回はドンパチしても問題無いそうだ。それで今回は涼子に正親を同行させる。」と言ったら涼子と正親は「えぇ〜!?」とハモった。「む、無理ですよ!ぼ、僕まだ入ったばかりですし、仕事もそんなに知らないですよ!」と焦りながら正親が言い、「こんな奴を同行させるのか!?絶対に足手まといになるだけだぞ!ってか1人でいけるぞ!」と涼子は批判した。それに対して道重は「大丈夫だ、何事にも経験というだろ?あと、涼子が暴走する抑止力にもなるしな」と笑いながら言った。涼子は「ふざけんなよ!」と怒っているがそんな事はお構いなしに道重は「これは決定事項だ」とだけ言った。「よし、皆んな任務開始だ」と言う声に涼子は舌打ちをして、革ジャンを捲り上げて時計を見た。そして「ほら、行くぞ」と嫌がる正親を引きずってBARを出た。それを牧は笑って手を振り見送った。

 

 2人が出て行った後、牧は道重に「あの2人組ませて大丈夫ですかね?」と聞いた。道重は「大丈夫だろ。なんとかなるさ」と笑いながら言った。

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また逢いましょう 大樹海 @dai1123

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