第8話

目を覚ますと部屋の中で床に寝ころんでいた。さっきまでのは夢だったのかもしれない。それもそうだ。あんなに不思議なことが実際に起こるわけがない。


少し残念な気もしたが、楽しい不思議な夢だったので、夢ならばそれはそれでよかったのかもしれないと思った。


それでもやっぱり少しは本当だったのではないかと期待もあったのでビー玉を入れている缶カラを覗いてみた。

それがよかったのか、いけなかったのか。



青いビー玉はひとつもなかった。



私は急いで鏡の前に走った。

ゆっくりと鏡の中の自分の目をみる。



その目はぼんやりと青く鈍く光っていた。






それが何だったのか、未だにわからない。けれども、あの子にはまた会えるような気がする。


寒い雪の日になるとまだ私の目は鈍く青に光るから。


お菓子の缶には青いビー玉を補充しておいた。ビー玉じゃないガラス玉もちゃんと揃えてある。あの子がいつ来てもいいように…。










「青いガラス玉持ってない?」



あの雪の日、確かにあの子は私の前に現れた。青いガラス玉を求めて。その声をもう何年も聞いていないけど…


またあの声がするのを待って、私は今日も雪の降る外を窓から眺めている。


 



                 おわり

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雪に埋もれる 夜水 凪(なぎさ) @nagisappu

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