タイトルにPreludeとあるとおり、この物語は一つの青春物語に繋がっていく前奏曲なのだと思います。
舞台は卒園式が終わった直後の高校。
上級生の門出を祝わず屋上で惰眠を貪っていた主人公の瑛理が渋々と体育館に片付けを手伝いに行き、落ちているシュシュを拾い、持ち主を探すという日常の一コマを切り取ったような話なのですが、彼は終始誰かと漫才のように話をしています。
彼の傍を片時も離れない、他の人間には見えない存在。
そんな少女の存在が、他人の意を汲んだり誰かを慮ったりができない瑛理を支えているのですが、当の瑛理は飄々として我が道を自由に突き進んでいる感じがします。
卒業式の後で彼は数人の生徒と会い言葉を交わしますが、彼らも皆どこか一風変わっていて、他人と上手く馴染めないタイプです。
見えない少女や癖のある生徒達と瑛理とのどこか噛み合わない会話にクスリとさせられるうちに、学校という窮屈な集団生活の中でもがく不器用な彼らがいつしか愛おしく思えてきます。
彼らがもがき、時にぶつかりながら大人への階段を上る途中で強烈な個性と折り合いをつけていく、そんな過程を見守り応援したくなる前奏曲です。