6#アヒルとガチョウ

「やっと2羽になったね、アヒルさん。」


 「うん。ガチョウさん、わたし連れてどこに行くの?」


 「ねえ、アヒルさん。まだ僕の事愛しているかい?」


 「え?ガチョウさん。何でそんなことを聞くの?」


 「だから、僕の事まだ愛してるかって・・・」


 「うん!!どんなに種族が違っても、あなたを愛し続けてるわ。じゃあ、あなたはわたしを愛してるの?この『魔力』持ちでも?」


 「『魔力』なんか関係ないさ。純粋に君をこれからも愛し続けてるぜ・・・!!」



 てくてくてくてくてくてく・・・



 「なあ、アヒル、これから僕と『結婚』してくれないか?」


 「え?何で?お互い『番』持ってるじゃん!」


 「でも、見てみろよ。お互い種族と同じ『番』と結ばれても、相手は野鳥でも僕達は家畜だ。

 『雑種』しか宿せない。

 だから、種族間でなく、家畜間として『結婚』したいんだ。」


 「・・・・・・」


 「『式場』は、僕と君が出会った窪地・・・君が風船の紐に絡まってもがき苦しんでいた、あの窪地で。」


 「いいわ・・・。行きましょう!!わたしたちの『式場』へ。」





 「着いたぞお。僕達の出会った場所!!」


 「でもまだ、周りは変わってないねえ。」


 「『変わった』のは、あの時散乱した血染めの羽毛が風雨に晒されて、何所かに飛んでっちゃったけど・・・」


 「あれ?この水色の血染めの風船・・・わたしが『儀式』で膨らまし割って、花壇に飾られたんじゃ・・・」


 「いいや、ハクチョウの女王様に頼んで再生したんだ。この日のために。

 ま、2回も再生したからゴムがだいぶ薄くなってるけどね。

 今から僕が君のために、この風船を膨らますよ。」


 「あれ?ガチョウさん?風船が割れる音が苦手で風船膨らませられないんじゃ・・・?」


 「大丈夫さ。君となら・・・」


 


 ぷぅーーーーーーーっ


 ぷぅーーーーーーーっ


 ぷぅーーーーーーーっ


 ぷぅーーーーーーーっ




 「はい。続きはアヒルさん、膨らませて。」


 「わたし?」


 「うん。パンパンに膨らませて。」


 「いいわよ。」



 


 ぷぅーーーーーーーっ


 ぷぅーーーーーーーっ


 ぷぅーーーーーーーっ


 ぷぅーーーーーーーっ



 

 きゅっ!



 「吹き口、舌で結んだわよ。

 こうしてみると、風船って綺麗ね・・・

 夕日の光が当たってまるで・・・涙みたい・・・」

 

 「涙・・・泣いてるの?アヒルさん・・・」


 「そんなガチョウさんだって、涙・・・」


 「この風船は、僕たちの『愛の結晶』だね・・・」


 「そうね・・・あなたとわたしの『卵』・・・これから始まる『愛』という雛が生まれる『卵』よ・・・」




 

 「アヒルさん・・・」




 「ガチョウさん・・・」




 「この『卵』、割ろうか。」




 

 「『愛』という雛を孵すのね・・・」




 「そう・・・尻と尻を付けて、風船に乗っかって・・・『愛』という雛が温められて・・・孵化させるんだ・・・」




 「いいわね。」




 「いくそ。それ・・・!!」




 むぎゅっ!




 ぱぁーーーーーん!!




 

 「あれ?ガチョウさん・・・今回は騒がないのね。」


 


 

 「僕・・・嬉しんだ・・・!!

 『愛』が孵化したんだ。お前と僕の。」


 


 「ようこそ、『愛』の雛。」




 「これから、一緒にこの『愛』の雛を育てようよ・・・」



 

 「うん!!」




 

 アヒルのピッピとガチョウのブンは、お互い翼で抱きしめ、嘴でキスをして、ブンがピッピに乗り、お互いの『愛』の雛をあやした。




 

 夕日は遠くの山々を輝かせ、2羽の飛べなくても、お互いの『愛の翼』で飛ベる鳥達を優しく包み込んだ。






      ~fin~

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ハクチョウの女王様と翼ある風船達のものがたり アほリ @ahori1970

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