ファンタジーに詳しく無いので、スチームパンク・ファンタジーというジャンルがあるか分かりません。 でもそこには豊かな人間関係と、悲しさを乗り越える逞しさがあります。宮崎◯駿ばりの自己犠牲があり、読後も爽やかです。 彼ら(主人公だけでは無いと私は思っていますが)は、どんな魔法を使ったのでしょうか?
スチームパンクと魔法ファンタジーが噛み合い、その世界に住んでいる人々の生活や歴史を浮き彫りするような奥行きの深い世界観にロマンを感じました。魔法使いなのに魔法が使えない主人公がかけがえのない友人を得て、果ては世界を救う運命を担うことになる。その青春と冒険を同時に駆け抜ける爽快感が、読後にじんわりと温かい余韻となって胸に沈んできました。ちなみに、主人公の心の中(地の文)では自分のことを『僕』と言っているのに、口に出すときは『俺』になっているところが可愛いポイントです。
魔法の使えない魔法使いの家系の少年、ルカは王立クライン大学レナート校に進学しそこで個性豊かな仲間達と出会います。彼らはそれぞれ秀でた能力を持ち、互いに助け合いながら困難を乗り越えていきます。緻密かつ巧みな描写でスチームパンクの世界が作り出されており、少年少女たちは周りの人たちの助けを借りながら、古来より続く因縁に決着をつけるのです。「誰でも魔法使いになれる時がある」作中での言葉が示すとおり、例え魔法がなくても技術と努力で偉業を成し遂げることができるということを教えてくれる作品です。