mo_modoki

第1話


うまくため息がつけないから煙草を吸うようになった。

毎日毎日、息を吸うのも億劫で、ひとつ息を吸って、吐いて、また吸って、吐いて、


酸素


酸素が欠乏すればお釈迦になるらしい僕の身体をニコチンという毒で少しずつ少しずつ侵していく。


ゆるやかな白い丘。その丘は2Dなようだ。いや、今目をこらしてよく見た感じによると3Dだ。

そのゆるやかな丘の上を白いボール、とても小さな白いボールがゆっくりと転がって、ボールは丘の上まできて少しとまる。そしてまた次の加速を始める。そしてまた、


意識せずにしていたことでも、意識的にやり出すとペースが狂ってくる。

なんだか呼吸が少し乱れているような気がしてくる。

実際乱れている。


気持ちが悪い気がする。


くゆらす煙草の煙は不思議な形をゆらありゆらりとさせながら部屋に吸い込まれていく。


僕は少し笑う。その不思議でいてなんだか綺麗なそれがとても好きだから。


僕が口から吐いた煙もゆらありゆり。

煙につられて僕もゆれる。


ため息ではない。呼吸をするのが少しずつ楽になっていくのを感じる。


煙草を吸うのはため息がつけないから。うまく息が吸えないから。


そうだろうか。


どうだっていいが、白い丘を転がっていたボールはもう見えなくなってしまった。


少し眠い。

ゆらありゆらりと。


ゆりかごのような。


暖かい色が見える。


膝をさっきより強く抱いた。




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