一条 良善 1

 一条 良善は兵庫の三田で育った。


三田は都市計画の中では計画農業地区とされ、住んでいる殆どの人間が政府が管理する農園の就業者だった。

外国人はこの農園に出稼ぎにやってくる。

子供も自国から一緒に連れて来られたり、日本で生まれたり、だったが、おおむね日本国籍は優先して取得せず、親と同じ国籍を取得していた。


良善の進んだ公立の学校に日本人は3割程度しかいなかった。

学校内では大体同じ国籍を持つ人同士でグループになることが多い。

目立ったいじめのようなものは無かったが、日本人グループは何となく隅に追いやられているような雰囲気があった。

粗暴な父親の影響からか、良善は小学生の頃から頻繁に喧嘩をしていた。

特に外国人グループには因縁を付けるような形で喧嘩を吹っかけていた。

日本人なのに何となく学校で小さくなっていなければならない雰囲気が大嫌いだった。

そのまま中学校までは進んだが、成績は絶望的で、高校は絶対に入れないから農園就業への申請をした方がいいと教師からアドバイスを受けたほどだった。


元々進学する気もなく、仕事をする気も全く無かった良善は両親と大喧嘩して大阪の地下都市へと出稼ぎという体で出ていった。


良善のたった一つ自慢出来る事は、喧嘩が好きで異常に強い事だった。

小学生レベルの算数も出来るか危うい知能だったが、漫画の様に三田の不良達の間では伝説になるほどだった。

身長、体格に恵まれ、武器を持った相手も返り討ちにし、高校生にも負けたことが無かった。

それだけしかなかったし、良善はそれでよかった。

どうやって食べていくかなんて考えてなかった。

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