最後の晩餐何が良い?
桜宮輝仁
第1話
もう嫌になった。
何もかもが嫌になってしまった。
窃盗の冤罪をかけられ、先生にキレられて叩かれて俺も先生にキレた。
その結果、壁を破壊してしまった。
もちろん親にも先生にも怒られた。
他にも色々ある。
生まれつきアトピー性皮膚炎に悩まされてる。
最近は特に痒い。
もう疲れた。
病気に、環境に、現状に、自分に、周りの人に、この世界に嫌気がさした。
もう死のう。
自分の口座にお年玉と自分の稼いだ金とで2万9千円入ってる。
これを使って最後の晩餐を楽しんでから、この世界に未練を無くしてから死のう。
どんな死に方が良いか悩むなー。
それよりも何を食べようか。
晩餐って言ったけど持ち金を使い切るまで好きなものを食べ尽くそう。
もうお金も気にする必要が無い。
もうバイトして稼ぐ必要も全くない。
やっと、色んな意味で自由になれる。
将来のためにって名目でとっておいた金も全額好きなものを食べるために使える。
死んだらもう怒られないのかな?
死んだらどこに行くんだろう?
死んだらどうなっちゃうんだろう?
わかんない、何にもわかんない。
でも今の現状から、この世界から消えてしまう事だけはわかってる。
だからこそ未練を無くそう。
未練って何があるだろうか?
青春もした、恋愛もした、仕事もした、学校も行った、童貞も捨てた、飲酒も…未練って何があるだろうか。
未練…死ぬことがそもそも未練かもしれない。
でも良い。
最後の晩餐を楽しんで死のう。
食べたいもの…焼肉、ステーキ、お寿司、ファーストフード。
どれも捨てがたい。
どれも良い。
どれも食べよう。
あれだけの金があればきっと大丈夫、どれも食べられる。
僕は手に持ってるスマホでいつものブラウザを使って調べた。
ステーキは前にお父ちゃんと行ったステーキチェーン店へ行こう。
300gで2460円と税。
残りは2万6343円
次は焼肉だ。
昔、お父ちゃんと一緒に住んでた頃によく家族で行った焼肉屋へ行こう。
遠慮はいらない、贅沢しよう。
食べたことも無い一番高い食べ放題にしよう。
堪能コース、4,380円。
残りは2万1963円。
まだまだ余裕だな。
次はお寿司、近所の一皿99円の所に行こう。
20皿食べるとして1980円。
残りは1万9983円。
予想以上に残る。
残りの使い道はまた考えよう。
とりあえず、明日学校をサボって今考えた通りに食べに行こう。
学校なんて今更行く必要はない。
だってもう死ぬんだから
嬉しいなー、学校に行かなくても非難されない。
学校を卒業できなくても、中卒にならない。
だって明日死ぬんだもん!
最高の気分、この16年半の間で一番良い気分かもしれない。
もうすぐ母が帰ってくる。
また何か言われるだろうな。
LINEでも怒られたのに、帰ってきたらまた諭されると思う。
とりあえず今日は平静を装おう。
朝、最近で一番良い目覚め。
最近はストレスとか痒みとかで寝れない日が続いていたからとても幸せな気分だった。
親が仕事に行った。
俺も学校行く感じを装って一番好きな服装で郵便局へと向かって全額下ろした。
朝食を食べる振りして食べなかったからお腹が空いて仕方がない。
まずどこから行こうかな。
最初は近さ的に寿司屋へ行こう。
「いらっしゃいませー」
懐かしい、去年だったか幼馴染みの女に奢ってもらって以来久しぶりに来る。
あいつ元気かな?
前に二度、体の関係になってから連絡すら受け付けてくれない。
そんな事考えてたら涙が出てきた。
泣いてる場合じゃないんだ、最後の晩餐だ楽しまなきゃ。
予定通り20皿食べ店を後にした。
次の店に行くにはお腹いっぱいだったから近くの公園へと行きベンチに腰掛けて大好きなスマホゲームを遊んだ。
そういえばバレンタインイベントやってたのを忘れてた。
この公園も色々思い出す。
はっきり言ってうざい奴だったけど、遅くまでそいつとかとよくこの公園で遊んだな。
懐かしい、あいつ中退しちゃったからなー。
元気かな?また涙が出てきた。
時間もかなり経ちお腹も空いてきた。
次はステーキにしよう。
公園からも近いからステーキチェーン店に向かった。
下調べしておいた通りのステーキ300gを食べた。
ここも懐かしい。
お父ちゃんがよく連れて行ってくれた。
やっぱりここのステーキは美味しい。
満足して店を後にした。
街中を歩いているとどこもかしこも懐かしく思えてきた。
でもここは生まれ故郷ではない。
親が離婚してから住んでるだけ。
最後に故郷のお気に入りだった場所から夕日でも眺めたかったな。
今もあの場所あるのかなー?なにせ8年くらい前だもんな。
時間もあるしネットで一番楽な死に方を調べた。
首吊りか飛び降りが良いらしい。
そんなこんなしてたら時刻は19時、お腹も空いて焼肉屋へと向かった。
下調べ通りに一番高い食べ放題を頼んだ。
店舗は違うもののこの焼肉チェーン店は昔お父ちゃんが連れてきてくれたことがある。
懐かしい。
さて、最後の晩餐は済んだ。
この残り金をどうしようかな。
そうだ、大好きだったスマホゲームに課金しよう。
こんだけ課金すれば運営の助けになるでしょう。
この世界に残された人達の為に使い方だ。
俺は急いでコンビニに向かいitunesカードを買いまくり課金をできるだけした。
さて、時間だ。
死ぬ前だってのに最高の気分だ。
嫌な学校に行かずに、ひたすらに美味しいものを食べれ、昨日の夜は眠れ、好きなゲームのガチャをたくさん引けた。
あれ?今幸せだ。
あんなに幸せなんて無いって思って死のうと思ったのに金を使いまくって欲望のままに生きたら幸せになれた。
これが何回もできるならこれからも生きれるかもしれない。
でも金は有限、もう無い。
働きたくない、学校にも行きたくない。
やっぱり死のう。
俺は一番高いビルに登り飛び降りた。
さよなら世界、さよならみんな、さよなら父さん母さん、さよなら愛する人よ…
さよなら、さよなら、さよなら……
さよなら。
またいつか会える日まで
最後の晩餐何が良い? 桜宮輝仁 @teluhito
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