第4話 ネット麻雀天帝編➁

東1局ドラ3p。南家からのスタートだった。

最初の配牌は、

23479m114p27s南東中 という手牌。

ツモ次第では伸びていきそうな配牌だ。

まず字牌から落としていくが、字牌切りのセオリーは鳴かれたくない風から切ることだ。

自分の手牌があまりにも悪い時には絞っていくが、この牌姿ならダブ東からぶった切る。

最終形としては平和3色をみたいところ。

1段目ぐらいいくと大体他家の動向がわかる。

対面北家の捨て牌が濃い。

序盤から中張牌を連打し5打目にやっと字牌がでてきた。

チャンタか国士かはたまた七対子か。

しかし単純に早い面子手も考えられる。

とりあえず対面を警戒しつつツモが進んでいくと、9巡目ドラ3p引きの間8m聴牌が入った。

手替りは679m引きの3種12牌。

平和をつけたいが迷わず即リーを選択。

自分から7mが3枚見えているので待ちは悪くない。

12巡目警戒していた対面から、無筋5p切り追っかけリーチが入る。

これはまずい。

序盤は変則手ぽかった対面の捨て牌が、俺のリーチ後からは明らかに手役を狙った河になっている。

単純に早い手だったか。

だが嵌張待ちリーチをかけたことを後悔してももう遅い。

ここからはもう捲り合いだ。

他の二人はベタオリ。

振るか、ツモるか、流局するかの3択。

東パツ満貫でも振りこもうものなら一気にきつくなる。

しかしこの時俺の鼓動は最高に高鳴っていた。

恐怖からではない。

この普段では味わえない勝負の瞬間に俺はいる。

それが全てを物語っていた。

たかがネットゲーム。

たかが麻雀の1局にそんな熱くなるなよと誰かが言うかもしれない。

しかし昔ある人にこんなことを言われた。


「勝負ごとやビジネス、スポーツなんでもいい。全ての物事においてその勝負時一瞬一瞬に本気になれない奴には勝機は訪れない。」


流局まであと2巡。

南家の俺は最後海底がまわってくる。

海底でドラ3pをツモった。

あぁ負けたとその瞬間に思う。

結果は海底タンヤオ3色ドラの跳満放銃。

状況はかなりきつくなった。

だがここから1発で形勢を逆転できるのがこの麻雀というゲームの良さでもある。

俺はいつのまにかかいていた汗を拭い、エナジードリンクを胃に流し込んだ。

頬を両手でバシッと叩き気合いを入れ直す。

勝負はまだまだここからだ。


局は進みなんとか満貫や、安い手を上がりつつオーラスを迎えた。

南4局3本場ドラ9s

トップは東パツ満貫を放銃した対面で44900点持ち。

2着目は42000点持ち。

俺は25600点持ち3着目。

跳満ツモではトップは捲れない点数。

結構絶望的な点差だ。

配牌は

1129m126p1589s東西という手牌。

この点差だとトップはあまり無理に手はつくってこないだろう。

2着目南家は俺とは満ツモ圏外。

逆にトップとは7001300ツモでもかわる点差なので、確実に狙ってくる。

倍満なんて配牌の時点で不可能ってパターンがほとんどだが、幸運にも俺の配牌はそれが見えていた。

何がなんでもトップを取らなければならない状況ではないが、トップが見えるなら狙わない手はない。

この手牌で倍満となるとリーヅモ純全3色ドラ1だろう。

ドラの9sを活かしての123の3色狙い。

序盤から6p、5sときるのでチャンタが浮き彫りになるがそれは仕方ない。

3巡目7s、5巡目3p、7巡目8巡目に立て続けに1s、10巡目9m、11巡目に3mを引き、9mと1sのシャボ待ち純全ドラ1の聴牌が入った。

ただこれではツモっても、裏裏でなければ倍満にならない。

裏裏がのるには裏ドラに8mか9sがいる必要があるが、8mは2枚見えで9sはそもそもドラだからかなり可能性は薄い。

しかし8mが2枚7mが3枚自分から見えているので、9mが狙い処でもある。

リーチしてツモって2着か、聴牌を外して倍満を狙いにいくか。

時間制限があるので、これらの様々な情報を瞬時に判断して打牌を決めなければならない。

焦るな。落ち着け。そう心に言いかける。


「こんなところで妥協してちゃ何が勝負師だよ。ダッセーな俺。」


ふとそんな言葉が笑みと共に自然とでる。

そして腹を決め迷わず1sを落とし聴牌を崩した。

ここで何も根拠なくカッコつけたわけじゃない。

俺は熱くなりつつも、冷静にある場の情報に気付いていた。

索子の下がかなり安いということに。

必ず山にある。

予想通り14巡目2sを引いてのペン3s待ち3色聴牌。即リー。

鳴きが入っているのでツモはあと3回だが、なぜかツモれる気しか俺はしなかった。

ラストのツモ牌。

俺にはわかっている。

この牌は確実に3sであると。

牌をツモった瞬間俺はツモォォォーーと雄叫びをあげた。

急いで周りに誰もいないか確認する。

恥ずかしい笑。

結果は倍満を見事にツモり、初戦をなんとかトップで終えることができた。

椅子にダラっともたれ掛かり気持ちを鎮める。

対局が終わった後はいつも燃え尽き、何もする気力が無くなるのが難儀なところだ。

俺はフラフラと立ち上がりベットに倒れこんんだ。

昼過ぎの太陽の光が、カーテンの隙間から部屋の中に入り込む。

対局の反省点を思い返しながら目を瞑っていると、いつのまにか深い眠りに入っていた。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

月給よりフリー麻雀の方が稼げるから、新卒入社した上場企業退職してもいいですか⁈ 神楽坂 詩季 @ryohai

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ