第3話 ネット麻雀天帝編➀

あなたの生きがいはなんですか?と聞かれたら、俺はこう即答する。麻雀だと。

今まで特に熱心に打ち込んだものがない俺が、唯一心を囚われたのは麻雀だった。

もともと麻雀を始めたきっかけは、史上最低のクソ親父の影響である。

親父は大のギャンブル好きで、その中でも特に麻雀にはまっていた。

俺の名前「牌司」は、麻雀が大好きだった親父が考えてつけた名前らしい。

牌を司るで「牌司」。

字面はなんかカッコイイが、つけられた理由が「麻雀の神に愛されそうだから」だとは誰も思うまい。

小さい頃はこの名前が俺は嫌いだった。

毎日酒を飲んでは母親に怒鳴り散らし、ギャンブルで大金を溶かしてくる親父がつけた名前だったし、何より書きづらい。漢字むずすぎ笑。

おまけに「アルプスの少女ハ◯ジ」と似てるから、ハイジハイジとよくからかわれていたものだ。

しかし麻雀を生き甲斐にしている今となっては、有難い名前になってしまったが笑。

その親父とも母親に愛想つかされ、俺が高校生の時に両親が離婚して以来会ってない。

母親にはとても感謝している。女手一つで俺と5歳下の妹を育ててくれたからだ。

今では俺は社会人になったし、妹は大学に通っている。本当よく育ててくれたと思う。

母親とは正反対の親父だったが、麻雀を教えてくれたことには感謝している。

こんなに熱くなって中毒性があるゲームは他にない。

何だかんだ親父と同じ道を歩もうとしていていささか不安ではあるが、やめられないので仕方ない。うん。

そんな俺の休日は当然のごとく、麻雀漬けの日々を過ごしている。

言っておくがたまには友達や同僚と遊ぶぞ!たまにはな笑。


俺の休日はまずいつもと同じ時間に起きる。

遅くまで寝ていたいが、時間がもったいないからだ。

シャワーを浴びコーヒーを飲みながら朝食をとる。

そしてパソコンの前に座ってあるゲームを起動する。

そのゲームはオンラインネット麻雀「天帝」だ。

全国の麻雀打ちとレートや段位を競い合うネット麻雀である。

レートや段位が高いほど強者と認められるわけだが、この天帝には「天帝位」とよばれる最高の位が存在する。

現在ユーザー数は400万人を超えるが、天帝位なのは現在5人しかいない。

ちなみに俺はその2代目天帝位でもある。

ユーザー名はhaishi。

天帝界ではちょっとした有名人だ。

この天帝位になるには、帝上戦でトップの成績を収めなければならない。

帝上戦は天帝位5人とその下の十段10名、さらにその下の九段20名、計35名で争われる。

天帝位は上位5位に入れば現状維持、5位以下になれば十段の上位陣とサドンデスマッチを行う。負ければ十段に降段。

九段は上位15位内に入れば十段に昇段、下位5名になった場合は八段に降段となり帝上戦から脱落する。

十段は一位になれば無条件で天帝位に、15位以下は九段に降段、上位4位以内に入りサドンデスで勝てば天帝位になれるという仕組みだ。

この争いは1年を通して行われ、組み合わせも事前に決まっている。

今日はその第一戦目が行われてる日だった。

ネットの中ではあるが、段位に関係なく上位3名にはスポンサー企業から賞金もでるので皆んなガチでくる。

そのため対局の前は結構緊張する。

一戦目の相手は、九段二人に十段一人という組み合わせだった。

多少の入れ替えはあるが、毎年ほぼ同じメンバーなのでお互い手の内は知り尽くしていた。

特に天帝位である俺は、周りのやつらから何とか引きずりおろしてやろうと凄まじいマークに合う。

徹底的にいじめられるので、一局打つだけでかなりの神経を使うわけだ。

今日も激戦になるのは間違いないので、エナジードリンクと糖分補給にチョコを準備。

目を閉じて深呼吸し集中力を高める。

チクタクと時計の針の音だけが部屋中にこだましている。

少しすると一回戦のルームが開いた音がした。

まだ太陽が昇りきっていない頃、俺は目を開け長い過酷な戦いに身を投じるのであった。



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