時咲翔という人間
突然だが質問だ。
皆は運命という言葉を信じるか?
運命というのは人の意志に関係なく訪れる吉凶禍福のことである。
世の中には『運命の赤い糸』だの『運命共同体』だのという言葉があるのだから運命というものがあってもいいのかもしれない。
しかし、俺は運命を信じない。
俺は自分が産まれてくる前から自分の人生が決まっているというのがどうしようもなく嫌だ。
運命をゲームに例えてみよう。
ゲームの主人公は勇者で悪の魔王と戦うストーリーだとする。勇者は仲間を集め、力をつけ、最後には魔王を倒す。それでハッピーエンド。
だが、自分がその主人公だとしたらどうだ?
確かに最終的には魔王を倒し、人々からの名声を得る。
しかし、それは決められたものだとしたら?
主人公が魔王を倒すというルートを通ったに過ぎない。
別に主人公が強かったのではなく、『強くさせられ』、戦わされただけだ。
自分の人生にルートがひかれている。
それを嫌に思うかは人それぞれだろうが、自分の人生をゲームに置き換えられていて、それを知らない奴(この場合は神様とかであるかは知らないが)にプレイされているとしたらどうだ?
流石に嫌ではないだろうか?
自分の人生くらい自分で決めたい。
だから、俺は運命を信じない。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「翔兄ー!起きろー!」
いつものように妹、桃花の怒鳴り声で起床する。時刻は7時30分。ちなみに学校までは電車と自転車で1時間30分程しかかからない。うん、遅刻だ。
「⋯⋯妹よ、出来れば6時半くらいに起こしてくれねぇか。俺、7時までには家出ねぇと遅刻なんだが」
「知らないよ、文句あるなら自分で起きなよ」
それを言われたらもう何も言い返せない。実際両親は共働きで朝早くに家を出るので、起こしてくれるのが妹しかいないのだ。
俺が今日の遅刻の言い訳を考えながら制服に着替えていると、
「それじゃあ翔兄!ちゃんと鍵閉めといてよ!」
バタンッ!と扉を閉め、家には自分一人になる。
学校休もうかなとも考えたが、そうなると空いた分の授業がさっぱりなので仕方なく支度し家を出る。鍵はちゃんと閉めた。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
俺こと時咲翔が通学している学校、暁高校は都内でも有数の進学校だ。
そのため、1日でも休むと授業についていけなくなり、他の生徒とも大きく差がつく。
その上俺の場合は、休んだ時にノートを見せてくれるような友達はいないので、休んだらその時が最後なのだ。みんなも友達作らなかったら嫌でも学校来なくちゃだから皆勤賞ちょー余裕。
俺は1時限目の授業が終わり、廊下に生徒が溢れてきた頃に教室に入った。
先生も最初の頃は俺を呼び出し注意をしていたが、それが何十回も続くと流石に面倒になったのだろう。今では本当に何も言ってこない。
そのまま何事もなく午後の授業を終え、帰宅する。
学校なんて行きたくないんだ。
別に虐められている訳では無いが、つまらなすぎる。何も無さすぎる。
もう少し何かあってもいいじゃないか。
家に帰っても誰もいなかった。
桃花は部活で両親はまだ仕事だろう。
今日も、何もなく1日が終わった。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「翔兄ー!起きろー!」
今朝と同じような、というか同じ声が聞こえる。
どうやら家に帰るなりベッドで寝てしまっていたようだ。
「⋯⋯なんだよ」
このまま寝続けたかったが、そうすると妹が何をするか分からないので、無理矢理頭を起こして言葉を投げかける。
「ご飯!」
妹はそれだけ言うとさっさと俺の部屋から出ていった。
「⋯⋯⋯⋯」
俺はあまり食欲がなかったのでそのままそのまま寝た。
夜明けと蛍 佐々木雄 @Sasakiyu14114
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