無限ポーションの作り方

江甲亘慶

第1話「こんにちは、ポーションさん!」

鏡の前に立ってキュッとリボンを絞めた。

新品の制服に少し扱いにくさを感じながら最後の身だしなみチェックをした。


「お母さん、今日バイトの面接です!帰りが遅くなると思いますので。」

「ハイハイ、気を付けて行ってくるんだよ。」

「あ、あと今日から弁当なんだから持っていくんだよ。」

「ああ、あともうそろそろ出ないと遅刻しちゃうわよ。」

右手につけている時計を確認するともう7:50になっていた。学校までは歩いて30分、8:30からスタート

「それでは行って参ります!」


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「うんしょ、うんしょ、うんしょ!」

「夕花お姉ちゃんまだ出そうにないの?」

「うー.....と 多分....この うんしょ.....階層だと思うあぁぁぁぁぁ!」


とてつもない勢いで水が出てきた。

彼女たちは逃げようとしたがこの勢いのを掘り当ててしまった時点で遅かったようだ


「ちょ、凄い勢い!   まずいって。」

「利奈、逃げてえええええええええ」

「あぁ、うわぁぁぁぁぁぁ」

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「念願のメイキング学校楽しかったなぁ。みんな優しかったしー。」


勇者や魔法使いなどの防具のデザインやペインティングを学ぶ為今年できた勇者学校のメイキング科に入ったのだ。


そうだそうだと顔をぺしぺしと叩き

「これから運命のバイトの面接。ポーション作りってどんなことするんだろう?」


彼女はチラシに書かれていた、ポーション作り士になろう!という文言に興味を持ったのだ

ポーションは実に空前のブームである。

確かに昔からあるものでダンジョンやクエストの勇者には必須アイテムである。

わくわくにときめかせて足取りは早くなった


しかし、


手に持っている携帯で住所検索をしたが、最初目を疑った。何度も見直した、え?え?え?


「何ここ」


そういうのも当たり前だ。めちゃくちゃボロボロで家が半壊しているのだから


「なんか、思っていたのと違う。この前テレビでやってたのって白衣着て巨大釜でぐつぐつ煮込んでたじゃん。建物なんて半壊してなかったじゃん!」


ポーション作りの裏世界を知ってしまった気がして帰ろうとしたが、いけないいけないと思い勇気を振り絞り中に入ることにした。


「ガジャ、ガジャ・・・・・・。」


すべりが悪いのか、ものすごい音をたてながら扉を横へ引いた


「ん?客か」


カウンターの上に足を上げて退屈そうにこちらを眺めていた。


「おう、何の用だ?」


すぐに気付いた、口と態度は悪いが赤髪の絶世の美女だったのだ。


「えぇぇとですね?」

「なんだ聞こえねーんだよハキハキしゃべれよ。」

ひぇぇぇ何なんだこの人怖い。

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・」


「あの・・バイト募集を見てきたのです!」


急な大きな声でびっくりした表情を見せながら、すぐに人を馬鹿にするような顔に変わって


「お嬢ちゃん、ごめんね。うちはバイトなんて募集してねぇーんだよ。さあ帰りな」


「えぇぇでも、昨日の、日曜の昼頃電話して男の人が出たのです!」


「んあ?男?おやじか?おーい、おやじなんかバイトがどうたらとかいってるやついるぞ?」

「おーい?」

「こりゃいねぇなぁ」


ガラガラ


「どうしたんですか?そんなに大きな声なんて出して紗枝ちゃん」


カウンターの右にある扉からこれまた美しい女性が出てきた


「ママ、この女がバイトがどうたらこうたらって」

ママ?この人が?20代にしか見えない。


「あらまあ、ホントに募集に集まったのですね!うれしいわ!」

隣の紗枝に手を合わせてよろこんでいる。

紗枝はいやいや手を合わせている。



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「えーっと、ここに座って待っててください。お茶いれますね?」

「は、はい」


さっきの半壊しているのとは別世界のようにリビングは綺麗だった。

そんな事よりも彼女は母親で紗枝が娘であることを確認したかったが、そんな事など聞けなかった


「さっきはごめんなさいね。あの子ったら態度悪いんだから。」

「あぁ、全然大丈夫なのです!」


ポンと目の前にお茶を出された。


「パパ来ないわねー。どこ行ったのかしら。」

「・・・・・・・・・・」

この人何歳なんだろう?てか本当にママなのでしょうか?


「そう言えばお名前聞いてもいいですかぁ?」

「・・・・・・・・・・」


このお店でのママって言う立場なのかな?

「あのー?」

「緊張しちゃってるのかな?」

「あ!えーすみません。ちょっと考え事を。」

「フフフ、大丈夫ですよ緊張しなくても。お名前をお伺いしてもいいかしら?」

「はい。大石英梨と申します。これからお願いします!」

「エリちゃんね。こちらこそよろしくお願いします。」


お互いぺこりと頭を下げた。


ガラガラガラガラガタン

扉が外れた音がした。


「あら、三人が帰ってきたわ。」

三人?

「また外れちゃったよ。これ直さないの?」

「金がないんだよ。そのためにも最も働いてくれよー」

野太い男の人の声だ。

「おう!おかえり!」

紗枝さんの声が聞こえた。


「もうビショビショになっちゃったよ」

二人とはまた別の女性の声だ。

「うわ、風邪引くぞ?てか、オヤジよーバイトの面接なんて忘れてねーか?」

「あっ、もうそんな時間だ!」

「リビングにママと一緒にいるぞ」



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「いやー遅れてごめんね。待ったでしょ?」

ガッチリした体格でいかにも元勇者だった感が溢れ出ている。

だがとても穏やかで優しそうだ。


「全然待ってないのです。よろしくお願いします。」

つけていた防具を外しながら彼は頷いた。


「じゃあまずはうちの家族を紹介しようか?」


まずは、と隣にいたママの肩に手をかけ

「この人が僕の妻の華矢かや」

「ちなみに勇者学校時代からの同級生。美人だろ?」

「あ....あ、はい」

「ママ、驚いてるよ」

「嬉しいですわ」

「自慢の嫁だぁぁ」

「まあ、パパったら」

二人してニコニコしている


「んでもってあのカウンターいたのが長女の紗枝さえ。」

さっきも紹介したけどもと後付けてママが言った。


後ろを振り向いて洗面所にいる残りの二人に対して


「おーい、二人とも来なさーい」

「ちょっと待っててね。えーと、次女が夕花。一応ここの跡取り娘だ。多分君とおんなじ歳だよ。」

「よろしくね。エリちゃん?」


いつの間にかリビングにいた。

「よ、よろしくお願いします。」

「そしてしっかり者の、三女利奈だ。2つぐらい年下かなぁ?」

「よろしくお願いします。エリさん」

「よろしく。」


「ちょっと待ってよ、そんじゃ私がしっかりしてない見たいじゃない」

頬をゆうかがふくまらせた。

「じゃあ、ゆうかはドジっ子ものってことで」

「ひどいよ。パパー」

「よろしくな?エリちゃん?」

「はい!」



とっても素敵な家族だ!



「よーし」



パパが立ち上がってこう言った

「よーし、エリちゃんにはゆうかとりなが教育係としてつく。仲良くやってな」

「はい。よろしくお願いなのです!って、え?」

「ん?どうかしたのかい?エリちゃん?」

「今日って面接なんじゃないのでしょうか?」



そうだ、面接と聞かされて来たんだ。言い回しからしてもう働く見たいじゃないか。

「あー。そうだったなー。エリちゃんは性格良さそうだし。うん合格!」









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無限ポーションの作り方 江甲亘慶 @echonobuchika

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