ガチャ●ンの秘密

深夜太陽男【シンヤラーメン】

第1話

 ガチャ●ンの秘密についてご存じだろうか?

 ガ●ピンとは某子供向け番組で大人気のキャラクターだ。公式設定では南国の恐竜の子どもであり、相棒に雪男のムッ●がいる。(なぜ雪男にタケコプターがついているのかは本題から逸れるので今回は触れない)

 ガチャピ●の特筆すべきところはその運動能力だ。長年番組を追いかけている君たちならよく知っているだろう。種目を選ばず数々のスポーツに挑戦し、素晴らしい成績を残している。宇宙にも行ってしまう。おそらく日本一体力と勇気のあるマスコットキャラクターだ。

 大人になってしまった君たちは悟ってしまっただろう。あれは着ぐるみで『中の人』がすごいのだと。大方の人間たちはそういうふうに解釈している。

 しかし僕は番組を熱心に視聴しながら気づいてしまった。あれは『着ぐるみそのもの』がすごいのだと。幼少時から僕は●チャピンに憧れて、ガチャ●ンになるのが夢だった。ガチャピ●に近づくために努力は惜しまず、ついに僕は某番組製作会社に就職した。


 夜遅くにその日の仕事は終わり、僕は倉庫の鍵を閉めて回っていた。今日がチャンスだ。僕は内側から鍵を閉めて、目星のものへと駆け寄る。夢にまで見たガ●ピン様だ。きっとこのパワードスーツには放送で公開している以上に秘められた力があるに違いない。纏えば僕もヒーローになれるのだ。

 現役で、厳重に丁寧に保管されているその緑の鎧を装着してみる。窮屈さもなく僕の体を包んでくれた。まるで胎内回帰のような心地だ。奇妙な温もり。心地よさから違和感へと変わる。


 なんだこれは?


 自分の汗とは思えない粘着質な液体が着ぐるみ内部で分泌されている。皮膚がヒリヒリと痛む。酸のような性質なのか、体を溶かされてるみたいだ。急速に、全身の神経を蝕むような激痛が襲う。

 乱れる呼吸、朦朧とする意識と霞む景色。自分の前方にとある人物が立っているのにようやく気付いた。●ックだ。

「今までガチャ●ンの秘密に気づいてそれを着ようとする人間は数多くいましたが、事実判明したときには何もかもが手遅れですゾ」

 不気味につぶやく赤いモジャモジャ。だがその言葉の真意を僕は掴んでしまった。●チャピンの公式設定では彼の両手首についてる七個のエネルギーボールが能力の源らしい。それは真実だ。このように人間を取り込みその生体情報を吸収し自分のモノにしていったのだから!

「我々、亜人種を淘汰してきた人間への復讐は、まだまだ続きますゾ~」

 ム●クの声が最後の外界情報だった。僕の叫びは着ぐるみの中でこだまするだけ。もはや痛みすらなくなっていった。

 そうだ、ガチャピ●が昔出した歌があるが、放送中止になったことがある。タイトルは『たべちゃうぞ』。

 それが最後の意識だった。僕は消失し、あこがれのガチャ●ンになれたのだ。

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ガチャ●ンの秘密 深夜太陽男【シンヤラーメン】 @anroku

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