二十歳前日
携帯のアラームが鳴る二秒前その一瞬を待ち侘びている
日めくりを一枚めくる瞬間は背筋を伸ばすことにしている
霜柱を踏む明け方の光たち 子どものように破壊者のように
完璧な水道水が蛇口から流れるような息をしている
掃除機の中さえ綺麗なものだけを詰め込みたいと思う土曜日
進むことは誰であっても許される 信号のない横断歩道
泣かぬよう華やかであれ空であれ私よ街に忠実であれ
脳に降り積もった今日を一瞬で溶かしてしまうシャワーは優しい
〇一二〇 八三二 二六〇 誰かの声を求める深夜
それでも、と呟くことを僕たちは努力と言った 哀しみだとも
十九の少女の殻は置いていく私が私として在れるよう
「マイナス」と美しく発音できる人でありたい 今日から二十歳
短歌「二十歳前日」ほか 桜枝 巧 @ouetakumi
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