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概要
愛媛県新居浜市は風が強い地域であった。というのも、北は瀬戸内海からの潮風が、南は四国山地から吹き降ろしてくる南風があったからだった。この地域ではその南風をとくに「やまじ風」と呼んでおり、広辞苑に掲載されるほど有名な風として、ある種の名物的な扱いをされていた。地元住民はそんな風音など慣れたもので、なにも気にすることなく夜を過ごすことができるのだが、旅行者や別の土地から引っ越してきた者にはすこし辛いものがあった。寝泊りするホテルやマンションがいかに新しく立派なものだったとしても、彼らは風のうるささで眠れない夜を過ごすことが頻繁であった。車の通りが多い大阪の街で生まれ育ち、どんなに車や雑踏がうるさかろうと眠ることできると自慢する人でさえこの風には太刀打ちできず、やはり寝不足の状態で朝を迎えるので
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