今更いうまでもないことですが、創作という行為は、自分の内面にあるものを引き出すことです。
例えば知識、思想哲学、主張、愛着、あるいは性癖や嗜好。
ただ、それをすべて汲み取って、しかもそれを物語へと成立させることは至難といって良い。これは、作家にとって永遠の命題です。
ただこの作品はそれが出来ている。
こことは違うと一目で分かる独創的な世界観を、生活感あふれる骨太な描写が支えています。『ファンタジー小説』と呼称するに十分にたる作品です。
と同時に、そこには異種への確かな愛が感じられます。こういうものが描きたいんだという、確かな作者さんの執着が見て取れるようでもあります。
じっくりと読み込んでもらえれば面白さが分かる、という甘えはない。
あらすじで多くを語らずとも良い。
まだまだ始まったばかりにも関わらず、そんな潔さを感じさせる堂々とした姿勢で、しかも説得力があるときた。
一目して情熱、技術、知識を惜しみなく投入していると分かる、強烈な力作です。