第6話 オーウェンリードの罪
「わたしたちは夫婦である前に研究者であり、可能性に魅了され、とある禁断の研究に手を出した」
「ふたり同意の上でね」
アリサがレオの手に掌を重ね補足する。同罪であると意思を示すかのように。
通されたのはコンクリートの壁に囲まれた狭い部屋だった。簡素な机と人数分のパイプ椅子だけがある。
クレアと名乗った年配の女性、落ち着き独特の雰囲気のある人物であった。アリサの古い友人でリリィの上司に当たると自己紹介を受けた。
部屋には父のレオと母のアリサ、妹のサリタとキア、そしてクレアとリリィ。
「あなた達の非凡さは我々も認めていますし、これまでの研究についても人類へ大きな貢献をしており通常ならば寛大な処分で済むはずです。ですが今回ばかりはそうも行かないことでしょう………。」
クレアはメガネの奥の目を細める。
「説明を求めます。一体この子ども達は何なのですか。」
「
「ありえません」
クレアに答えたレオへリリィは即答をする、何の話なのか全容がつかめない。
「私たちにもわかるように説明して、パパもママも」
唇を尖らせたサリタが足をバタつかせて訴える。いま話についていけないのはキアとサリタだけなのだ。サリタはつまらなくて当然だろう。
「僕からもお願いします」
「そうね、キアとサリタにも知る権利がある………パパとママはこの世界から
サリタの髪を撫で、優しい目でアリサが語り始めた。
「最初はただの職業上のパートナーだった、でもなんだかんだでフォーリンラブ?恋に落ちちゃったのね」
アリサはレオの方を見て微笑む。
「別段珍しい話しではないわ、でも、私たちは偶然にも、とある課題と可能性について同じ考えを持っていた。世界で生まれた私たちが
「倫理に反している………!」
声を荒げたのは意外にもリリィだった。怒ったように叫ぶ。
「そう言われる覚悟はふたりでしたわ、どう言われようとも構わない。それに、私たちにとって子どもは血の繋がった大切な家族だもの。何があっても守るつもりだったし、これからもそれは変わらないわ。ただ、これだけはきちんと言っておくわね、研究のために産んだわけじゃない。愛した人と愛する場所で暮らし、同意の上で妊娠出産を選んだの。例え倫理に反することになっても、そうしたいと思った。」
淡々とアリサは語った。
「それが私たち、オーウェンリード夫妻の罪です。」
キアが両親の顔を見ると、ふたりは落ち着いた表情で静かに裁かれることを受け入れているのだと悟った。
テキスト×テクスト 冬石 @fyic
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