お爺ちゃん

くらげ

第1話

 身近な人が死んだ時、僕らはまず彼や彼女の何を忘れてしまうのだろう

 顔か、思い出か、それとも触れた手の感触か


 お爺ちゃんが死んだ朝、僕はただただ泣いた。

 涙が枯れるほど泣いた。

 お爺ちゃんはドッキリとか、サプライズが大好きで死んだのはそれのひとつなんじゃないかって、そう思いたかった。

 本気でそう思ってすらいた時期もあった。



 そんなある日、魔法使いが僕の前に現れてこう言った。



「貴方の願いを叶えましょう。貴方の祖父を生き返らせてあげましょう。

 ただし貴方が忘れた彼についての記憶の一部はそのままにしておきましょう。」



 次の日、お爺ちゃんは家にいた。

 僕を見てニコリと笑い、無言で頭を撫でて自室へ行った。

 僕は嬉しくて嬉しくて。

 だけどその日はタイミングが悪かったのかな、僕がお爺ちゃんへ贈り物を買おうと思い入ったお店で強盗があった。

 強盗はすぐに捕まり事件は終結。


 お家に帰る途中僕は誰かに頭を掴まれた

 まるで心臓を誰かに掴まれたかのような衝撃。

 僕は咄嗟に後ろの誰かを一発殴り、家へ帰った。



 帰ってその話をすると皆心配してくれる。お爺ちゃんも心配そうに僕を見つめていた。



 次の日も、また次の日も襲われた。

 終わりのない恐怖にうんざりしたのかもしれない。

 僕は丘を走る道路の隅を歩いていた。

 予定通り。頭を掴まれる。わかってた。いつもこの時間にコイツは来る。

 僕は掴まれた頭の手を振り払い、ソイツを丘の下へ突き落としてやった。


 見ていた者は誰もいない。

 完全犯罪。



 帰ると誰もいなかった。

 どうやら葬式らしい。

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お爺ちゃん くらげ @ragi

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