最終話 物語の後の物語


「ねぇ、フェルト。この子の名前どうする?」


 フェルトと呼ばれた黒髪の男は少し考える。だが、いい案も思いつかない。


「アクアはどう?」


 フェルトは質問をしてきた青髪の女性に聞き返す。


「私もこれと言う名前もないかなぁ。義父おとうさんと義母おかあさんは何かありますか?」


 二人のことを少し離れて見ていた黒髪と金髪の男性と女性に尋ねる。


「んー、私は特にないわねぇ」

「俺はお前らつける名前だったらなんでもいいと思うぞ」


 二人の返答を聞くとアクアは少し困った顔をして、


「じゃあ、ムイちゃんはどう?」


 アクアのお腹をずっと興味深そうに見ている金髪の少女にアクアは尋ねる。


「え、私?! 私は・・・エルがいいと思います」


 ムイはそう答え、すぐに机の中に隠れてしまう。


「エルかぁ、ムイちゃんは本当に英雄伝説に出てくるエルが好きだよね」

「「前世ではエルの仲間だったかもしれんぞ」」


 窓の外から顔を出すそっくりな二人の姉妹がそう言って笑う。


「ごすっ!」


 二人の姉妹が笑っていると、姉妹よりかは身長が少しだけ高い姉妹にそっくりな女性が拳で姉妹の頭にゲンコツを入れる。


「エル様を侮辱するなよ」


 彼女はエト、二人の姉妹の姉だ。


「はは、相変わらずこの家は騒がしいな」


 玄関から上がってくる男性、ハルトが笑いながら歩いてくる。


「ハルト、久しぶり」


 フェルトはハルトに挨拶をする。


「ああ久しぶりだね、そろそろネイもくると思うよ」


 ハルトがそう言った直後、壁を壊して家の中に入ってきた赤髪の女性、ネイが姿を表す。


「みんな久しぶり! どう? かっこいい登場の仕方でしょ? この姿を見てフェルトも惚れ直して私のところに来てくれるんだわ!」


 そんなことを言っているネイにアクアは近づいていく。


「壁の損傷代でこれぐらいのゴルドでいいかしら?」


 アクアは笑顔を作り、一枚の紙をネイに渡す。その笑顔からは異様な恐怖が感じられ、一枚の紙に書いてある額からも恐怖を感じる。


「そ、そんな額払えるわけないじゃん!」


 ネイは涙目になりながらアクアに恐怖する。


「じゃあ、二度と壁を壊さない。わかった? それとフェルトは私の旦那さんだからね」


 ネイは完全にアクアに恐怖し、ムイが隠れた机の中に潜っていく。


「そんなに怒んなくても僕はアクア以外のことは付き合わないから安心してね」

「別にフェルトがそんな覚悟が甘い人だとは思ってないわよ。ただ、フェルトのことを自分のものなんていう奴が少し嫌なだけよ」

「はは、独占欲が強いなぁ僕の奥さんは」


 フェルトはアクアにそういうと、アクアは顔を赤く染める。


「そろそろ、初めていいか?」


 フェルトの父親、ルトバーが呆れたようにフェルトとアクアを見て尋ねる。


「あ、ごめん。そろそろ始めようか」


 アクア以外のみんながクラッカーを手に持ち。


「アクア、誕生日おめでとう!」


 直後、みんなはクラッカーの紐を引く。


「ありがとう!」


 アクアは笑顔で微笑む。



 その頃天界では。


「よかった、無事に転生できたんだね」


 悪魔の前に座る一人の神が悪魔との間にあるチェス盤をにおいてある駒を触っている。


「でもまぁ、あれからもう数百年も経っているだな」


 髪の前に座って盤面を眺めている悪魔が呟く。


「はい、チェックメイト」


 神は駒を板状に起く。悪魔はそれを見て悔しがる。


「もう一回だ! 次こそは絶対勝つ!」


 悪魔は駒を綺麗に並べていく。


「いいけどここ数十年ずっと同じことやってて飽きて来たんだよ。やっぱり二人だけだと暇だね」

「でもそれでよかっただろ。結果的にルトバーは死んだが、お前は髪の中で頂点に立ち、俺はここにも遊びに来れるんだから」

「そうだね」


 神と悪魔はもう一度盤面に向かう。



 もうこの世界には残酷な神はいない。この世界は全ての人間が幸せに暮らせる世界だ!

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異能力の復讐物語 空式_Ryo @Ryou77

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