第17話 対決
パンッ!!!
俺は先生の拳を右手で受け止めた。
「どんな理由があれ、教師が生徒に手を上げるのはいけませんね」
今現在、俺はココぞとばかりに格好つけている。
格好つけたいお年頃なのだ。 是非許して欲しい。
「なんだぁ? お前も俺に楯突くって言うのか?」
「えぇ、 生徒会長としてこの学校の生徒を傷つけるような真似はさせません」
「ほほう、 やれるものなら…… やってみやがれ!!!」
木村先生は、 今度は俺めがけて思いっきりパンチをしようとしてきた。
そのパンチをまだしても俺は
パンッ!!!!
右手で止めて見せた。
「う、内山くん…… あ、 ありがと」
安達さんは、 さっきの勢いが嘘だったかのように弱々しい声でお礼を言ってきた。
「いえ、 生徒を守るのが生徒会長の役目のひとつですから。安達さんはさがっていてください」
「う、うん……」
「くそおおおおおっ!!!!!! なんで全部止められるんだ」
「先生、 暴力を振るうのはもうやめてください」
「うるさいうるさいうるさいいいい。 俺は、決着をつけないと気が済まない主義なんだ」
なんなんだこの男は…… なんでこんなやつが教師なんて仕事、 やっているんだ。向いてないどころの騒ぎじゃないだろ。
「わかりました、僕と勝負しましょう。 バドミントンで」
俺は、そう言い放った。 スポーツでの勝負なら安全だろう。
俺が、バドミントン勝負を持ちかけると体育館にいた、生徒が驚いたような声を一斉にあげた。
「おいおい、いくら生徒会長といえど、経験者の先生に勝てんのかよ?」
「そうだよな?」
といった、声も混じっていた。 それを聞いた俺は最高に格好をつけて
「皆様ご心配なく、実は僕も……経験者ですから」
と言った。
俺の、その発言に驚いたのか周りはざわつき始めた。
「ほう、いいだろう。 その勝負受けてたってやる」
先生は、にやりと笑みを浮かべながら返事をした。
さてと、この勝負絶対に勝たないとな。
***
勝負の内容は、普通のバドミントンの試合と同じルールで21点を2回先に取ったほうが勝ちの2ゲームマッチ。
丁度、バドミントン部が3人授業にいたことから審判もしっかりと3人つけて行うことになった。
「俺に、勝とうなんざ。 1万年と2000年は早いぜ」
どうにも、 愛してしまいそうな年数だな……
まぁ、だが油断はできなそうだ。 いくら俺が経験者といえど100%先生より強い補償なんてない。
それに…… 勢いで勝負を切り出してしまったものの俺の方は、耐えられるだろうか……
「よし行くぞ!!」
「ファーストゲームラブオールプレイ」
審判のコールで試合は始まった。
まずは、先生のサーブ。 バドミントンはテニスと違って、上からの強力なサーブではない先生のサーブはその巨大な見た目とは裏腹に、的確なコントロールでギリギリなところを狙ってきた。
俺は、 それを右の奥に返した。
先生は俺のショットを難なく返してそこから、しばらく長いラリーが始まった。
やはり、強いっ……
俺は、なるべく先生を動かそうと色々なコースを狙い続けたしかし少しのミスで浅く、相手が攻撃しやすいような球をあげてしまった……
「馬鹿め。 この下手くそがあぁあぁ」
かのように見せかけた。
先生は、俺の浅いロビング(コート奥に返す打球)をスマッシュで打ち返してきた。
もちろんとんでもなく早い。 しかし俺の狙いはこれだ。
俺は、先生のスマッシュをいとも簡単に速い打球で返した。
先生は決まったと信じていたのか、 その打球に反応することが出来ず俺にポイントが入った。
中学時代、俺は相手のスマッシュを返球するのが得意だった。
バドミントンというスポーツは速い球で打てば打つほど、その打球が帰ってきた時速い球を打った側が苦しくなる。 そういうスポーツだ。
つまり、いまの技は先生のスマッシュが速いが故に俺に、点数を奪われてしまったと言うことである。
「な、なるほど。 やるじゃねえか」
「先生こそ。 素晴らしい動きです」
そのあとも、試合を続け俺はどんなに速い先生のスマッシュもどんな体制になろうと打ち返し続けた。
「はぁ、はぁ、はぁ。 クソっ!!! なんで俺のショットが決まらないんだッ!!!」
ラリーこそ長く続くものの、結果を見ると1ゲーム目は20-14で俺があと一点取れば。 1ゲーム目が終わるという状況だった。
周りの生徒達も、 「生徒会長すげぇ」 「強すぎかよ」 「かっこいい」 「そんなやつ、さっさと倒しちゃえ」などの、言葉を発していた。
それのせいもあるのか先生の、怒りゲージがドンドンと上昇しているようだ。
よし、とりあえずこのゲームとるか。
俺は、そう心に決めサーブを打った。
俺のサーブに対して、先生は難なく返しまたラリーが、続いた。
俺はこの試合、未だにスマッシュを打っていない。
そろそろ1発喰らわせるか……
そう、何となく思っているとちょうど先生が、打球を上げた。
よし、チャンスだ!
俺は、その打球に対して全力でスマッシュを打った。
俺のスマッシュは、先生のものと同等かそれ以上に速いものだった。
しかし、いまいち沈みきらないままネットを超えた。
そして、なんと、その打球は先生の顔面に直撃してしまった。
「ぐひゃっああ!!」
スマッシュが当たった先生は気絶してしまった。
これは…… 試合続行は無理そうだな。
「こ、これは先生の棄権だよな」
「そうだな。 やっぱり生徒会長すげえええ」
と言ったような、拍手とともに俺を称えるような言葉でその場はつつまれた。
褒められるのは悪い気はしないな。ふふふ。
「それにしても、涼介。 なんであんなに強いのにバドミントン部に入らなかったんだ?」
「そうだよ。内山会長ならきっとレギュラーとれたって! 」
虎徹と、大橋さんが俺にのところにきて言ってきた。
「中学の時に、怪我をしてしまったんですよ。 僕は部活として1日に何試合もこなせるだけの肩をもっていません。 正直今の試合もこたえました」
「な、そうだったのかよ。 それは残念だな」
「まぁ、今でもバドミントンは好きですけどね」
「じゃあ今度、私の試合の応援にきてよ! もちろん虎徹くんと一緒にね」
これは、虎徹といかなかったらどうなるんだろうか……
ふとそんなことを思った俺であった。
偽りのキャラを演じる生徒会役員の日常 優輝斗 @yukito0903
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