第16話 体育の授業

「涼介~この次の授業なんだっけ?」


 チャイムが鳴り3時間目の授業が終わると虎徹が俺に聞いてきた。


「次は、体育ですね。 今日からバドミントンですよ」


 うちの学校は、隣のクラスと2クラス合同で体育の授業を行う。

 その中で、外競技を選択するものもいれば、体育館でやる競技を選択する人もいる。

 今回は、外の種目が野球と陸上、体育館の競技がバドミントンと器械運動だ。

 そんな中俺と虎徹は、バドミントンを選んでいた。


「あぁ、そうだったな。早いとこ着替えないとな」


「えぇ、そうですね」


 俺と虎徹は、男子更衣室に急いだ。


 ***


 3時間目


「今日からこのメンバーは、バドミントンだ!! バドミントンはよく公園とかでやるようなみんなができるスポーツだが、甘く見てはいけないぞ」


 そういったのは、音階の授業を担当する木村勘太郎きむらかんたろうという体育教師である。

 それにしてもこの人、めっちゃ身長高いな。 軽く185はありそうだ。


「こんな先生いたっけ?」


 虎徹が、俺に聞いてきた。


「僕も初めて見るのでわかりませんが、きっといたんじゃないですか?」


「そこっ私語を慎め!!!」


 木村先生はそう言って、左のポケットからチョークを取り出し俺と虎徹に投げつけてきた。

 狙いはものすごく完璧だった。

 が、俺と虎徹は持ち前の運動神経で咄嗟に、反応して避けることに成功した。

 俺と虎徹が、あまりにも華麗に避けたせいか、周りからは拍手が巻き起こった。

 そして、隣のクラスの大橋さんが小声で、


「虎徹くんかっこいい」


 と満面の笑みで呟いているのを、俺は聞いてしまった。

 大橋さんも、バドミントンだったのか。


 この教師、なかなか攻撃的だな。 てか、なんで黒板のない体育館で、チョークを持ってんだこの人は……


「あっぶねぇな! 当たったらどうすんだ!?」


 虎徹は、荒々しい声で言い放った。

 まぁ、多分当てるつもりで投げたんだろうけどな。


「ふんっ。 当てるつもりだったんだけどな。 これからは俺が話してる時の私語は慎めよ」


「はい今回は、僕達の失態です。 すみませんでした。 以後気をつけます」


 俺は、生徒会長な喋り方で謝罪をした。

 俺が教師で、こんなに丁寧な喋り方されたら逆にイラッときそうだな……


「わかれば、いいんだわかれば。 次やったら殺すぜ」


 なんなんだこの教師、いくら俺と虎徹が悪いことをしたからと言って、あまりにも言葉遣いや態度がやばくないか?


「っち! んだあいつ」


 虎徹は小声で言った。

 おいおい、また聞かれたらどうするつもりだ……


「よし、まずはラケットをもて!! グリップの握り方からだ。 バドミントンは基本的に、ラケットの面を床に垂直にして、握手するように握るウエスタングリップと、ラケットの面を床と、平行にしてフライパンのようにしてもつイースタングリップがある」


 木村先生は、基本のグリップの握り方から解説を始めた。


 ん? おかしいな。 この人…… 間違ったことを言ってるぞ。

 俺は、先生の間違いに気づいたので、訂正させようと口を出そうとしたその時


「先生! それ間違ってるわよ」


 1人の女子生徒が、先生に間違えを指摘した。

 しかもその指摘をした女子生徒は、絵に描いたような美少女だった。


「あ、あの子は、『2年生男子が選ぶ、一緒にベッドに入って天井のシミを数えたい女子』ランキング、 1位の安達結子あだちゆいこちゃんじゃないか」


 虎徹は、小声で言った。

 おいおいおいおい、小声でなんでことを言ってるんだこの男は……

 てか、そのランキングなんだよ…… 俺そのランキングの投票してないんですけどぉぉおおお。 生徒会に隠れてくそみたいな、ランキング作りやがって……


 安達さんが、先生に間違えをしたせいか、周りがざわついてきている。そんな、状況の中、木村先生は


「あぁ? 何が違うって?」


 と言った。


「はぁ? あんたそれでも教師なの? イースタングリップとウエスタングリップの説明が、逆だって言ってんのよ」


 安達さんは、 グイグイと木村先生を攻め立てて言った。

 あの、先生に向かってあんなにグイグイ行けるなんてすげーな。

 それに


「彼女、よくグリップの説明が逆だということに気づきましたね。 バドミントン部の子ですか?」


 俺は、ふと思ったので虎徹に対して言ってみた。


「いや、彼女はテニス部だな。 テニス部ではその美貌から、コートの女神とやばれているらしい」


 すごいあだ名だな。


「まぁ、たしかに美人ですね」


「おっ、涼介はああいうのが好みか?」


「別に、そういううわけじゃありませんよ」


 安達さんは、たしかにとても可愛かった。 ゆきをカワイイ系の天使だとすると、安達さんは美人系の女神だ。 テニス部でのあだ名もあながち、間違えではないな。

 とかなんとか、思っていると間違えを指摘されたのがよっぽど恥ずかしかったのか、木村先生が安達さんにゆっくり近づいて言った。

 !?あれは少しやばい状況なんじゃないか?


「おまえ、俺は高校の時、バドミントンで県16位だぞおおおおお。俺には向かうんじゃねぇええ。 俺がルールだぁあぁ」


 !?あの先生、言ってることが理不尽すぎやしないか? まぁ、たしかに県16位はそこそこすごいけども……


「たかが、16位じゃない!!!! 雑魚ね」


 おいおいおいおい、安達さんも安達さんだよ。 別に県16って聞こえ方はイマイチかもしれないけど、ものすごく強いからな!!


「さすがは、テニスで全国出てるだけはあるな。 言葉が強気だぜ」


 虎徹は言った。

 なるほど、全国出てる子だったのか…… そりゃすげーわ。


「雑魚だと…… よくもここまで俺をコケにしてくれたなああああ」


 木村先生は、とうとう限界だったのか安達さんに向かって思いっきり殴ろうとする体制に、入った。


「キャッ」


 これは、まずい……


 俺は咄嗟に、立ち上がり先生と安達さんのあいだに入った。


 パンッ!!!


 俺は、先生の拳を右手で超絶かっこよく止めて見せた。

 正直めっちゃ痛かったが、それは内緒の方向でお願いしたい。

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