第15話 はい

 ここは、生徒会室。

 ついさっき、友達の虎徹に彼女ができるという、衝撃的な出来事があった後で若干放心状態ではあるが、仕事は山積みである。


「よし、とりあえず体育の日にやる体育祭の、プログラムは早いところ決めとかないとな」


 俺は、生徒会長机に置いてある、体育祭についての用紙を見ながら言った。


「そうですね。 というかびっくりです。 今年やる体育祭のプログラムがまだ決まってないなんて。 細かいことならまだしもまだ全く決まってないとは……」


 ゆきの言う通りである。この乃木ノ沢高校は、去年割と色々な行事を行った。

 そんな中でも、文化祭と並びビックな行事である体育祭の、プログラムがまだ一切決まっていないのだ。

 しかも、決めるのが生徒会とか、前々から思ってはいたが権限強すぎるだろう……


「よし、ちゃっちゃっか考えよう」


「そうですね。 決めちゃいましょう。 まず開会式は学園長の挨拶ですね。そして生徒会長の挨拶及び注意事項」


「まぁ、無難なところだな」


 このようにして、プログラム決めは、滞りなく進んでいった。


 ***


 2時間半後


「よっしゃ、終わった~! 地味に大変だったな」


「そうですね。 まぁしっかり全員参加の競技のバランスとかも良い感じなのでこれで大丈夫じゃないですかね」


「あぁ、そうだな。 よし早速南さんのところに持っていこう」


「はい!!」


 ちなみに余談だが、南さんは自分の役職を学園長としている。

 乃木ノ沢高校なら校長じゃね?と、思う人もいるかもしれないが南さんは、いつか中等部もつくって乃木ノ沢学園にするという野望があるらしい。



 ***


 学園長室


 トントン。


「生徒会です。 体育祭のプログラムが完成したので、持ってきました」


「入っていいわよ~」


 南さんからの、お許しが出たので俺とゆきは学園長室に入った。

 俺は、学園長室に入りすぐさまドアを閉める。


「やっとできましたよ」


 俺はそう言って、南さんに完成したプログラムを渡した。


「よくやったわ。見せてちょうだい」


 ***


 数分後


「うん。まぁよくできてるわね。ただ、大事なものが足りてないわ」


「なんのことです?」


 一体なんのことだろうか、俺たちはしっかりと競技も考えて入れ、応援団による応援合戦も入れた。おそらく去年よりも大いに、盛り上がる体育祭になることだろう。


「そんなの決まってるじゃない。 あなた達の新曲披露よ」


 南さんは、不気味な笑みを浮かべながら言った。


 はい? 何言ってるんだこの人は……


「何言ってるんですか南さん、 わざわざ体育祭でまで歌わなくてもいいでしょう……」


「そうですよ、学園長先生。 なんで体育祭で披露しなくちゃいけないんですかぁ!!」


 全く、南さんの考えていることは、本当によくわからないな。

 体育祭で、俺とゆきが歌を披露するなんて、1ミリも体育関係ないじゃないか……


「別に、体育祭だけじゃないわよ。 これから体育祭までに何回か、全校集会があるから、その都度2人には歌ってもらうわ」


「!?はああぁあああ。 どういうことですか、そんな毎回毎回恥ずかしすぎるだろ。 人前で歌うのって結構緊張するんだからな!!」


 俺は、驚きのあまり声を張ってしまった。


「まぁまぁ。そっちの方が面白いしいいじゃない。 それまでにグループ名と楽器演奏できるようにしといてね~」


「ええぇ!?そんなこと短期間でできるわけないじゃないですかぁ!!」


 今度はゆきが、声を張った。 全く南さんは、すべてが唐突すぎる。


「まぁ、どうせ断っても無駄なんでしょうから 南さんをあっと言わせるくらい凄まじい、歌を披露できるようにして見せます」


 ここに来て、吹っ切れた俺は強気な発言をしてみた。 まぁゆきは歌うましなんとかなるだろう。


「せ、先輩そんなに強気で大丈夫なんですか?」


「ま、任せろなんとかしてみせる」


「さすがわが学校が誇る、スーパー生徒会長ね。 ちなみにあなた達に新しい、お仕事のお知らせよ」


「この後に、及んでまだなんかやらせるんですか……」


 俺は、ため息混じりに言った。


「ええ、この前の恋愛相談あったでしょ」


「はい、ありましたね」


「あれあなた達から内容を聞いたら面白かったから、ホームページの『生徒会お悩み相談コーナ』の応募ページを作っといたから。 依頼が来たらその人のお悩み解決してあげてね」


 !?この人なかなか厄介な仕事を増やしてきやがったな。


「なるほど、依頼された内容を、解決していけばいいんですね。 わかりました。頑張ります」


「あら、今回は物分りがいいじゃない」


「まぁ、もはやどう驚いたらいいかもわからん状態だからなぁ!! 全力でやってやりますよ」


 こうして、俺とゆきは学園長室をあとにした。


 ***


 下校時間。


「まさか、学園長が、あんなことを言ってくるとは驚きましたね」


 例によって俺とゆきは、誰かに聞かれたら困るので生徒会モードで、会話しながら家に向かっていた。


「そうですね。 まぁびっくりしましたが会長と仕事を、するのはとても楽しいので、歌はともかく悩み相談の話は、正直少し嬉しい気持ちもありました」


 ゆきは生徒会モードの声のトーンでそう言った。

 いやなんか、すごい嬉しいことを言ってくれてるけども……だけどその生徒会のキャラで、今のセリフはものすごい言わなそうだな。

 なんというか、ツンデレのデレの部分を、体感した気分だ。

 いまのゆき可愛かったなぁ。


「おや、嬉しいことを言ってくれますね。これからも頑張っていきましょう」


 俺は、若干かっこつけ気味に言った。


「はい!!」


 ゆきの『はい』は、声のトーンやテンション、表情が、いつものゆきに戻っていたが、とてもとても、とっても可愛かったのであえて、突っ込まないでおこう。

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