第14話 似たもの同士

 昼休み終了まであと10分。 そんな状況の中でことを隣にいるこの男は、1人の少女に告白をしようとしていた。


「よし、未歩ちゃんのクラスはここだな。早速行ってくる」


 そう言って虎徹は、教室に入っていった。

 それにしてもなんという行動力なんだろうか……

 恐ろしい限りである。

 虎徹が教室に入ると同タイミングで、教室のもうひとつの扉から、本を片手に持っている少女が出てきた。

 待てよこの顔どっかで……? あっ、この子大橋未歩さんだ。

 今さっき、虎徹の謎辞書で顔写真を見たから、間違いない。

 ということは、虎徹と入れ違いになったのか?

 呼び止めた方がいいよな。俺はそう思い、大橋さんに声をかけようとした。

 がそれよりも早いタイミングで


「あっ内山会長」


 と大橋さんに声をかけられてしまった。 逆に好都合かもしれない。


「あなたは確か、バドミントン部の大橋さん。どうしたんですか?」


「覚えていてくれたんだね! 嬉しい。 あの南條虎徹さんって内山会長と同じクラスだよね?」


 !?なんで大橋さんが虎徹を探してるんだ。 こんな偶然があるのか?


「ええ、そうですよ。虎徹くんがどうかしましたか?」


「なんというか、 少し用があって……」


 大橋さんは、小さい声で言った。

 いったいあいつはなにをやらかしたんだろうか……

 とそこに、虎徹がかえってきた。


「未歩ちゃんちょうどいなかっ、てあれ?未歩ちゃん!! 」


 虎徹は教室から出てきて早々、自分が探していた女性で対面で、表情が一気に明るくなった。

 そして、大橋さんの方も何やら嬉しそうである。


「虎徹くん、なにやら大橋さんが君のことを探してましたよ」


「俺を?ちょうど俺も、君を探してたんだよ」


「え?そうなの? 何で??」


 大橋さんの頭の上には、?マークが現れているだろう。

 大橋さんが虎徹に、なんの用があるかは知らないが、まさかこれから、告白されるともおもうまい。


「まぁ少し言いたいことがあってね」


「私も、あなたに言いたいことがあるの」


「じゃあそっちから、先でいいよ〜」


 虎徹は、大橋さんに先に要件を求めた。


「あの、南條虎徹くん。 私と付き合ってくれませんか?」


 !?!?!?ええええええええええええ

 嘘だろおおお…… なんで告白をされたあああ!

 おかしい、どう考えてもおかしいぞ……やらせか?ドッキリか?


「え!?用件ってまさかそれ?」


 虎徹は驚いたように言った。 虎徹は、普段からは想像出来ないような驚いた顔をしてんな。 まぁ無理もない、仲がいいわけじゃないうえに、たった今一目惚れして、告白しようとした女の子に告白されたんだもんな。

 俺だったら発狂して、屋上から飛び降りるかもしれん……


「私ね、虎徹くんのこと何も知らないけど一目惚れしちゃったの」


 どうやらこの子も一目惚れらしい。


「実は、俺もさ、さっき君に一目惚れして告白しに来たんだよ」


「え?そうなの?嬉しい!2人とも一目惚れで両想いなんて!!」


 なんなんだこいつら…… 俺からしたら、一目惚れなんて考えられんぞ……

 やっぱり大事なのは中身だろ! まぁ大橋さんはよく知らないけど、虎徹に関しては、少し頭おかしいところはあるにしても、基本は良いやつだから大丈夫だろうけど。


「じゃあ、お、俺たち今日から付き合うってことでいいのか、な?」


「もちろん!」

 

 俺の目の前で、カップルが誕生してしまった。それにしても、大橋さんはどこで、虎徹に一目惚れしたんだろうか?

 聞いてみるか。


「まさか、2人が交際することになるとは、数分前の僕は全く想像してませんでした。おめでとうございます。 ところで大橋さんは、どこで虎徹くんに一目惚れしたんですか?」


「よくぞ聞いてくれました、内山会長!! この本を見てください」


 大橋さんは、そう言って先程から抱ええていた本を俺に見せてきた。

 その本の表紙には、『乃木ノ沢高校男子生徒図鑑』と書いてあった。

 ……おいおいおいおい。 まさかこの子も虎徹と同じようにこの本で彼氏探してたら、虎徹に一目惚れしたっていうのか……


「まさか、この本の中から彼氏候補を探してたってことか?」


 俺が、あっけに取られている隙に虎徹は聞いた。


「うん!そうなの」


 なんでこんなに堂々と言えるんだ、虎徹以外の男子だったらきっと引いてるぞ……


「実は、俺もそれと似た本の女子版を作っててそれを引いて君に一目惚れしたんだ!」


「そうなの!? まさか一目惚れした理由も一緒だなんて!! 私たち運命ね」


「あぁ!!そうみたいだな。 俺たちこれからお互いのことを知っていこうな!」


 ダメだ、こいつらの会話についていけない……


「ま、まぁ。何はともあれ。 これから末永く幸せになってくださいね。僕は君たちのことを全力で応援しています」


 俺がこの場に耐えられなくなり無理やりまとめに入ると、そこでちょうどチャイムが鳴った。


「あっ、授業始まっちゃうね。じゃあ後で一緒に帰ろ?」


「わかった!!」


 2人は、一緒に帰る約束をしその場は解散となった。


 ***

 放課後 生徒会室


「っていうことがあってさ~」


 俺は、放課後の生徒会室でゆきに今日の昼休みにあったことを、すべて話した。


「ええええええぇ!! そんなことってあるんですね。私が告白を受ける側だったら、普通にふります」


 よかった、ゆきはまともな感性の持ち主みたいだ。


「まぁ、一目惚れ自体は悪いことじゃないと思いますけどね」


「そうか?やっぱり大事なのは、外見より中身だろ」


「必ずしも、一目惚れが見た目だけとは限らないんですよねぇ、それが」


 ゆきは何やら意味深に言った。


「ん?どういうことだ?」


「まぁまぁ、そんなことより体育祭のこと決めないと!」


「あぁ、そうだったな。チャチャッと仕事終わらせないと」


 これから虎徹と大橋さんがどうなるかは知らんが、ぜひ幸せになって欲しいもんだな。

 俺もいつか誰かと付き合うことが来るのだろうか?

 そん時は絶対幸せになろ。

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