第13話 恋人が欲しい
ある日の昼休み。
「涼介~飯食おうぜ」
虎徹は弁当を俺の机の上に置きながら言った。
「えぇ、そうしましょう。虎徹くんの今日の昼食は、お母さん特製超豪華幕の内弁当ですか?」
虎徹の弁当は、週に一回ものすごく豪華なのである。
「まぁな。毎回毎回こんなに食べきれないっていてるのにすごく迷惑だぜ」
と虎徹は若干嬉しそうに言った。 おそらく本心ではとても嬉しいのだろう。
きっといい親子なんだろな。
「まぁまぁ。君のお母さんは有名な料理研究家じゃないですか。忙しいのに、こんなお弁当を作ってもらっているのだから感謝の気持ちは、忘れないでください」
「相変わらず。お前は真面目だなぁ。わかってるよ、そんなこと」
残念ながら、普段からこんな大真面目というわけでは、ないんだけどな。
「真面目が売りですからね」
「お前の仕事ぶりを見てれば、誰だってわかるよ。 そんなことより……」
「はい?」
虎徹は何か言いたいことがあるらしく、言葉を溜めた。
「彼女が欲しいいい!!!」
めちゃくちゃ唐突だなおいいいいい。
結構、いい感じに真面目キャラを作ってたのにいいいい。一瞬でぶち壊しじゃねえか!
「なかなか、唐突ですね……。好きな人でもできたんですか?」
「この学校の美少女すべてが、俺の好きな人だ」
なんつーゴミ発言だ。
「そんな考えじゃ、一生彼女なんて出来ませんよ。虎徹くんはイケメンなんですから、本気で好きな人ができたらきっとうまくいきますよ」
「ほんとか? よしちょっと待ってろ」
虎徹はそう言って、後ろにある自分のロッカーの方へ向かった。
なにか、持ってくるのだろうか?
何やらガサゴソとロッカーを漁る音がしたあと、虎徹はファイルのようなものを持ってきた。
「なんですか、それは?」
「俺が1年の時からコツコツと情報を集め、まとめ、作り貯めてきた乃木ノ沢高校 美少女図鑑だ」
虎徹はドヤ顔で言い放った。
中をペラペラとめくるとちゃっかり、顔写真まで付いている。 一体こんなものをどうやって集めたんだろうか……
それにしても……
「よくこんなものつくりましたね。 素直に尊敬します」
「そうだろう、そうだろう」
虎徹は、意気揚々としていた。
「ですが、一体こんなもの何に使うんですか?」
「よくぞ聞いてくれた! この中から俺の彼女候補を探し、そしてアタックする!!」
えぇえええ……
なんというくだらない企画だ……
ここで探してアタックをしにいったとしても、成功する確率が上がるわけでもなかろうに……
「そんなことをしてる暇があるなら、本気の恋をした方が……
「うるせぇ。俺はこの中から最強の彼女を見つけ出してみせる!名ナンパ師と呼ばれた、じっちゃんの名にかけて」
コラああああ!!!!ぱくりな上に不名誉極まりない称号を口にするなああああ!!
と心の中では思っていた俺だが、虎徹の前では微笑むことしかできなかった。
「とりあえず適当に開いてみよう」
虎徹は、そう言って適当にページとページのあいだに指を突っ込んでファイルを開いた。
「それにしてもよくこんなに集めましたねぇ」
「まぁな。よし俺の彼女はこの人だ!」
虎徹が開いたページにあったのは、ゆきだった。
「これは、松岡さんじゃないですか。彼女には手を出させませんよ」
「おぉ、副会長ちゃんじゃん。 たしかに可愛いよなぁ。 でも心配すんなよ。 副会長ちゃん顔はいいけど取っ付き難いから、俺向きじゃないわ」
何で、上から目線でものを言うんだこいつは……
悪いがゆきが、虎徹からの告白をOKする確率はたこ焼き屋のたこ焼きに、タコが入ってないくらいの確率だぞ。
「まぁ、彼女がOKするとも思えませんし違う方にした方が賢明でしょう」
俺がそういうと、虎徹は新しいページをめくった。
「よし今度こそ、俺の彼女はこの人だ!」
そこに出てきたのは、
「あぁ、この方なら去年、バドミントンで県大会ベスト8まで残っている子ですよ。表彰したので覚えてます」
「ほほう、めっちゃ可愛いじゃん。正直もろタイプだわ」
どうやら本格的に、タイプらしい。 大橋さんはたしかに隣のクラスだったな。
「それで、どうするんですか?」
「正直この本を、ここに持ってきた時は半分冗談だったが自分で作ったこの辞書の中に、こんなにもろタイプな子がいたなんてな。よし本当に告白してこよう!!」
おいおい、マジかよ…… しかもよくよく考えると、自分で写真まで集めて作ったはずの資料なのに、なんでタイプのこの子のことを今知ったみたいな感じなんだよ……
でも、成功しようと失敗しようと面白そうだな。
「この子、隣のクラス見たいですよ。 告白するなら放課後あたりが狙い目じゃないですか?」
「いや今行こう!」
!!おいおい、どんだけ行動力あんだよ……
「あと昼休み十分しか無いですけど大丈夫ですか?」
「告白なんて、一言好きですって言うだけだしなんとなんだろ。よっしゃ行ってくるわ」
こんなに、即決で告白まで行けるなんてすごいな……
素直に感心する俺であった。
どうなるか結末が楽しみだ。
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