第12話 恋の結末

 源先生に話を聞いてから、一日がたった。

 俺とゆきは、いつものように生徒会室で仕事をしていた。


「横溝先生に、なんて言うよ」


「そうですねぇ。 まさか、源先生がそっけない対応をとってる理由がカッコよすぎるからなんて理由だとは思いませんでしたから、結構難しいですね」


「そこなんだよな…… カッコよすぎると話しかけられないもんなのかなぁ」


 俺は、ゆきを常に可愛いと思っているが、なんとか理性を保って普通に会話ができている。

 源先生は、俺がゆきを可愛いと思っているよりも強く、横溝先生のことを思っているのだろう。

 ……て俺は何を語ってるんだ。


「恋する乙女は大変なんですよ。きっと、源先生も色々な苦悩があるんでしょう」


 女同士、なにか通づるものがあったのか、ゆきはひとりでに頷きながら言った。


「なるほど、乙女は大変だな。源先生からの告白はなさそうだな」


「はい、やっぱり告白するなら男からですよ」


「まぁそれは俺も賛成だな。 やっぱり男なら決める時は決めないとな!」


 どうやら、告白に対する考えは俺とゆきは同じらしい。

 まぁ俺は、まだ人生で1度も告白したことないんだけどな。


「先輩、次に横溝先生が来たら告白するように進めましょう!源先生の本当の子持ちのことは伏せて」


「源先生の本心を言わないで、横溝先生は告白してくれのかな」


「そこは、先輩の話術でどうにかしてください」


 なかなか難しいことを言ってくるな……

 まぁ、やるしかないかそれに……


「やっぱり最初から、OKだってわかった状態で、告白するのはずるいもんな」


「そうですね!横溝先生に男を見せてもらいましょう」


 ゆきは最高に楽しそうに言った。こいつはいつも元気だな。この学校でも、この性格で通ってたらきっとものすごくモテたんだろうな。なんだかゆきは、ものすごく損をしているんじゃなかろうか……

 俺はそんなことを考えながら、書類整理をした。


 ***


 30分後


 教室をノックする音が聞こえた。

 おそらく横溝先生だろう。俺はゆきに準備万端だと知らせるために、アイコンタクトをした、すると向こうも準備万端だと言わんばかりにアイコンタクトをしてきた。

 どうやらお互いに準備は完了しているようである。


「入っていいですよ」


 俺は、少し大きめの声で横溝先生を招き入れた。

 横溝先生は軽く挨拶して、前回と同じようにソファに腰掛けた。


「どうぞ」


 横溝先生が、腰掛けたタイミングをみはからってゆきはお茶を持ってきた。


「サンキュ。早速夏菜のことだけど、なんか収穫はあったか?」


 夏菜とは、源先生のことだろう。


「はい、1年生にそれとなく話を聞いたところ、源先生に現在お付き合いしている人や恋愛感情を抱いている人はいないみたいです」


「そうなのか」


 横溝先生は、ほっとしたよう表情をしながらお茶をすすった。


「だから横溝先生にもチャンスはあるのではないか?」


 ゆきが言った。


「あぁ、でも好きな人がいないことがわかったけど俺には素っ気ない態度をとるんだ。 だから俺がただ単に嫌われてるだけかもしれないな」


「多分そんなことはないと思いますよ」


「なんでそんなこと言いきれるんだ」


「昨日、学園長に聞いたんですけど、源先生がしょっちゅう横溝先生の話をしてきて困ってるんだそうです。そんなに仲いいならさっさとどっちかが告白しろって」


 俺は大嘘をついた。そんな話聞いたことない。ただこれも横溝先生に告白させるためだ。嘘も方便!


「そ、その話は本当か!!」


 横溝先生は、突然ことを方を掴んできた。


「えぇ、こんなタイミングで嘘つくわけないじゃないですか」


「まぁ、それもそうか……」


「そうと決まれば告白しかないんじゃないですか?やはりここで男を見せておきましょう」


 ゆきは、若干素が出そうな感じになりながらも、なんとか低い声を保って告白を促した。


「でも、本当に大丈夫なのか?俺、成功すんのかな」


「必ず成功するとは限りませんけど、さっき松岡さんが言ってくれたように、男を見せる時なんじゃないですか?」


「そっか、そうかもしれないな。わかった俺告白するわ!」


 よっしゃ!俺は、こころの中でガッツポーズをした。

 これで作戦は成功だな。


 ***


 数日後


 俺とゆきがいつもどおり生徒会室で喋りながら仕事をしてるとドアをノックをする音が、聞こえた。


「入ってください」


 俺はいつも客を招く時と同じように、招き入れた。


「よっ!」


 生徒会室に来たのは、横溝先生だった。


「今日は、どうしたんですか?」


「お前らのおかげで、無事に夏菜と付き合うことになったから一応、報告してやろうと思ってな」


「それはおめでとうございます。これからも末永くお幸せにしてください」


「私たち生徒会はいつでも協力するので、またなにかあったら言ってください」


 ことをお祝いメッセージにゆきは宣伝を、付け加えた。


「あぁ。 そうさせてもらうよ。これからも期待してるぜ!生徒会!!」


 横溝先生は、そういったあと仕事の残りがあるからと職員室へ帰っていった。


「よっしゃ!!成功したな!」


「ですね!さすが先輩です。恋愛相談もできちゃうなんて」


「まぁよくよく思い返すと、特別なことは何もしてないけどな」


「いいじゃないですか!何はともあれ、これで初の恋愛相談クリアですよ」


「そうだな。今日の報告が車で気が気じゃなかったが、一安心だ」


 と安心していたのもつかの間、生徒会室の扉が勢いよく開く音がした。


「君たち。恋愛相談成功したみたいね!上出来よ」


 扉を開けたのは、どうやらこの目の前に君臨している南さんのようだった。


「学園長先生、一体なんのようですか」


「よくぞ聞いてくれたわ。恋愛相談を終えた君たちに新しい仕事よ!」


「新しい仕事? 今度はなんですか?」


「体育の日で行われる体育祭の種目決めをしなくちゃいけないから案だしといて〜」


 おいおい、今年やる体育祭の種目を今の時期に決めてないのかよ……しっかりしてくれぇ……

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