誰かからの贈り物
父が行方を眩ませて15年。差出人不明の荷物が届いた。
国際便で届けられたソレの包みを開けると、懐かしい装丁の見慣れた手帳が目に入る。
幼い私を置いて蒸発した父のものだと言うことは、手帳を開いてすぐにわかった。
お父さんが書いてくれたクリスマスカードの字とよく似ていたからだ。
手帳にはレディトピア入国に胸躍らされている父の記録と、レディトピア国民に対して不法行為をしたとして強制労働に従事させられた父の絶望がありありと綴られていた。
外部に法律も国内地図も出回ることがないよう厳重に情報統制がされている上、レディトピア内部からは国際ネットにアクセスも出来ないためあくまで噂にすぎないが、あの国では国外の男性を労働力として利用するために罪をでっちあげ、無償労働をさせているのではないかという黒いうわさもある。
もちろん、由緒ある立派で神聖な国、レディトピアがそのような残虐な行為をしていると信じる人は少ない。
なにしろ、大五次世界大戦で壊滅をした旧世界以前から唯一存続している恒久平和国なのだ。
私たちは、レディトピアで生まれ、追い出された男性たちの子孫…。野蛮な血を受け継ぐ魂である。
父はきっとなにかの誤解をされて投獄されたに違いないことは確かだが、多分私たちが女帝様への信仰が足りないが故に起きた不幸だろう。
私は、旧世界世代から崇められているという女性の石像に祈りをささげた。
マリアと書いてあるその像は、どうやらレディトピアの始祖の母親らしいと伝承では伝えられている。
いつか、私も母親もレディトピアへ移住できますように…。そう祈りを込めて私はマリア像の前に跪く。
女性独立国旅行記 小紫-こむらさきー @violetsnake206
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