女性独立国旅行記

小紫-こむらさきー

マイク・マコーリーの手記

女帝歴867年 1月23日

 私はいよいよ「女性だけが住める国」として独立を果たしたレディトピアへの入国権利を果たした。

 この国は男女同権社会から完全隔離されて800年の由緒ある国でもある。

 観光目的の入国すら厳しく制限をされているこの国に足を踏み入れられるだけでもとても貴重なことである。

 私は、名誉ある入国の記念にこの記録を残そうと思う。

 レディトピアの記録を外部に持ち出すことは本来ならば禁止されている。この記録はだれの目にも届かないのかもしれない。

 だが、私は、この記録を書かねばならない。そんな使命感に駆られているのだった。


 その前にこれから入国するレディトピアの歴史についてかるく触れてみよう。

 女帝歴元年。始祖フェミレネール・キャナダはこのアメイリカ大陸の北端を自身の夫の莫大な資産で買い取り、私有地としたのが始まりだとされている。

 当時の世界情勢は、女性差別が横行し、様々な犯罪から女性を守るために男女平等のため活動家だったフェミレネールは私有地に苦しむ女性を住まわせ、保護することを決意したのだという。

 国としての独立は難しく、50年近くも諸外国との争いがあったらしいのだが、猛烈なバッシングと共に勇敢に戦った始祖の女帝フェミレネール女史の活躍劇を記したもの以外の資料は現存していないため、割愛させていただこう。

 そこには、女性たちの活躍の歴史があったに違いないが、当時の女性差別者たちによって焚書されてしまったに違いない。

 そして、女帝歴54年、見事に女性だけが住める国として認められたレディトピアは厳しい入国管理と様々な著書・エンターテイメントの提供・厳重な情報管理を経て今の歴史ある神秘の国として成立しているのである。



女帝歴867年 2月31日


 いよいよ入国の時がきた。どうやら情報機密のため入国希望者はヘッドホンとアイマスクをして車に乗せられて入国をするらしい。

 とても美しい都市であり、先進的な政策を行っているという。

 女性たちは守られ、とても穏やかな暮らしをしているのだろう。私の生まれ育った国も女性を大切にしているが、それでも心無い一部の男性が女性を苦しめるという痛ましい事件はある。

 私は、レディトピアの優れているところをどうにか持ち帰り、生まれ育った国でノウハウを活かしたいと思っている。

 国に残してきた妻子も、来週になる私の帰りを待っていてくれる。お土産にレディトピアブランドの洋服でも買って帰ってあげよう。喜んでくれるはずだ。



女帝歴867年 3月12日


 こんなの話と違う。私は帰らなければならない。ここの実態はおかしい。狂っている。


女帝歴867年 12月12日


 まだ帰れない。こんなはずでは


女帝歴869年 10月26日


 この記録をみた誰かへ。私はもう生きていないだろう。

 愛する妻と娘へどうかこの手記を届けてほしい

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